8月31日、世界貿易機関(WTO)6期目の事務局長アゼベド氏が任期を1年残して辞任した。事務局長の選定が続くなか、臨時代行の人選合意に至らず、WTOはトップ不在の状態になった。
WTOは現在、多国間貿易交渉の難航、紛争処理の一部機能不全などの内部の重大な課題や、世界貿易環境がコロナ禍で深刻に悪化するという外部の試練に直面している。入り混じる難局をいかに打開し、規則を基礎とする多国間貿易体制の中心であるWTOの地位を取り戻すかというのは、アゼベド氏が後任者に残す宿題となった。
多国間貿易交渉が泥沼に
WTO設立後の初の多国間貿易交渉・ドーハラウンドは2001年にスタートし、農業・農業以外・サービス貿易・環境製品などの分野に及んでいるが、これまでに大きな進捗はなく、「貿易円滑化協定」などの限られた成果しか挙げていない。
また、国際貿易環境はここ20年で大きく変化したにもかかわらず、ECなどの当面の国際貿易に関する新たな議題が交渉の枠組み内に組み込まれていないため、交渉の議題と現実の関連性が問われている。
多国間貿易交渉はWTOの3本柱の一つであり、数人の事務局長候補は選挙理念を述べた際に交渉機能の回復がWTO改革の鍵となると強調した。
紛争処理機能が一部マヒ
紛争処理機能はWTOのもう一本の柱である。発足以来、WTOは貿易紛争600件を処理し、国際貿易環境の安定及び予想可能性を守ってきた。ところが、米国が上級委員会の委員の選任を妨害したため、同委員会は昨年末に欠員のため機能停止となり、紛争解決機能も一部マヒした。
コロナ禍で世界貿易の動揺がより深刻化
世界中を巻き込んだ新型コロナウイルス感染症及び各国が打ち出した対策は、世界貿易の自由な展開及び成長を抑えた。WTOは、今年の貨物貿易は13%-32%縮小すると予測し、交通・渡航制限は世界のサービス貿易にダメージを与えると見ており、各国の貿易政策及びコロナの行方にまだ見通しがついていないため、世界貿易はL字回復する可能性があると警鐘を鳴らしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年9月1日