米国の有名な経営者であるイーロン・マスク氏は北京時間29日、3匹の豚を使いNeuralink社の最新のBMI(脳マシンインターフェース)技術を公開し、広く注目を集めた。
業界内の専門家は、今回公開された技術は画期的だが、人類がBMIを脳疾患の治療に用い、さらには記憶を保存し脳波で制御するためには解消すべき多くの難題が残されているとした。
今回の最大の進展はシステム統合
復旦大学類脳スマート科学・技術研究院の王守岩副院長は、今回の最も重要な進展はBMIの各種技術のシステム統合としている。BMIは電極、電子、神経科学などの各専門分野と関わる。世界各地で報告されている成果を見ると、一部の単一技術の進展は今回公開されたものより優れている。王氏は「しかしこれらの技術をいかに一つに統合するべきかが、この分野の課題だった。マスク氏は産学研協力モデルによる科学研究成果の製品化の実現の可能性を示した」と述べた。
脳疾患の治療はまだ先の話に
マスク氏は、BMI技術は不眠症、うつ、健忘症などのさまざまな脳疾患・問題を解消すると述べた。しかし専門家は、現在の技術水準で見ると、これはまだ遠い先の話だという。
国内外のBMI研究分野は現在、まだ進展のない先端の問題を抱えている(特に脳科学、神経科学)。マスク氏が今回公開した豚の脳波と運動の軌跡といった情報について、業界関係者は「まだ比較的マクロで、機能が単一的」としている。王氏は「科学者は運動機能の解読について、すでに多くの取り組みを行っているが、感情、痛み、記憶といった脳のハイレベルな機能と関連する解読はより複雑で、人類の認識は非常に浅い」と指摘した。
また脳波の解読は難しいが、脳波を書くことはそれ以上に難しい。BMIはインタラクティブのプロセスで、脳波を理解した上で干渉・治療を行う必要がある。専門家の分析によると、この解読と書き込みと関わる神経の解読とコーディングのメカニズムは依然として「ブラックボックス」だ。科学者の同問題への理解はまだ非常に浅く、蓄積が少ない。
多くの技術、例えば植え込む材料の生体適合性に関する問題も進展が必要だ。科学者もこれまで、植え込みデバイスが人もしくは実験対象から徐々に排斥され、収集される信号が弱まるといった問題に直面していた。またBMIシステムは帯域幅が不十分で、未来の脳とマシン間の高速通信の需要を満たしにくい。これもBMIの実用性を制限する重大なボトルネックだ。
科学研究の倫理にも大きな問題がある。堯徳中氏は「これまでも一部の動物保護団体がマスク氏のBMI研究に抗議していた。今回の発表会では、より知力水準の高い猿や人によるデモンストレーションがなかったが、これは豚のほうが倫理をめぐる物議を醸しにくいからかもしれない。豚の知力水準は比較的低い。今回は豚のハイレベルな機能を解読しておらず、豚をコントロールすることもなかった」と指摘した。
複合型人材の大幅な不足も現在、BMIの発展を妨げる重要な要素となっている。BMIの研究は各専門分野を高度に複合させたもので、コンピュータ、電子工学、機械制御、システム神経科学などの確かな基礎を持つ複合型人材でなければ同分野の先進的な研究を行えない。このような人材は国内外で不足している。マスク氏も発表会で最新の成果を紹介した後、各種人材の募集情報を発表した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年9月1日