2021年の全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)を控え、新たな歴史的起点に立って、中国が新しい発展エンジンをどのように作り上げ、第14次五カ年計画が好調なスタートを切れるようにするかが、今年の両会の重要な注目点の一つだ。
数十年に及ぶ安定した発展の後、中国経済という巨船はより挑戦に満ちた「新たな水域」へこぎ出した。一方では、世界の大きな変局が加速的に進行し、世界の新型コロナウイルス感染症の情勢にはまだ多くの不確実性があり、さまざまな派生リスクは軽視できない。もう一方では、中国経済が急速な成長から質の高い発展へと転換するにつれ、一部の従来型の成長の原動力では現実的なニーズに対応することが難しくなった。外部リスクの打撃への抵抗力を高めるにしろ、経済の長期的に健全さを維持する発展を促進するにしろ、新たな発展エンジンを加速的に育成することが喫緊の課題だ。
学者は、「新たな情勢の中で、中国が重点的に展開する新たな発展エンジンは主に3つある」との見方を示し、次の3点を挙げた。
エンジンその1:内需の拡大
2015年以降、最終消費の中国経済成長への寄与度はほぼ60%前後で安定し、経済の最も主要な駆動力になった。20年の中国経済が他国に先駆けて感染症の影響を克服できたのは、巨大な国内市場によるところが大きい。経済グローバル化が停滞する中で、中国国内市場により多く依存することが、中国にとって現実的な選択肢であることは間違いない。
中国は中所得層がすでに4億人を超え、国内総生産(GDP)の1人あたり平均は1万ドル(約105万円)を超えた。国務院発展研究センターの王一鳴元副センター長によると、「今後15年前後で中所得層は8億人に増え、相当な消費力を生み出し、経済成長の持続可能性を大いに増強するだろう」という。
ここ数ヶ月間に、内需拡大は中国の重要会議で「頻出するキーワード」になった。「短平快(投資が少なく、周期が短く、成果が現れるのが速く、収益が大きいこと)」式の奨励政策に比べ、現在の中国にとっては消費、貯蓄、投資に影響する制度的要素から着手し、内需拡大の長期メカニズムを構築することがより必要だ。この問題をめぐり、21年全国両会で何らかの答えが得られるだろう。
エンジンその2:科学技術戦略によるサポートの強化
歴史を振り返ると、ある国の経済が飛躍するときは往々にしてその科学技術力の高さに関係する。現在、過去100年間にも見られなかったような大きな変局が中国の一部重要分野における科学技術の不足点を明らかにし、このことは経済発展に影響するだけでなく、国の安全保障にとっても脅威になる。
中国は昨年、国家戦略の科学技術力を強化し、社会主義市場経済の環境の下での新型の挙国体制を整え、重要なコア技術をめぐる難関攻略戦をうまく戦うとともに、こうしたことを第14次五カ年計画と2035年までの長期目標に書き込むと提起した。今年の両会では、政府がこの目標をめぐってどのような具体的計画を打ち出すかに注目が集まるとみられる。
北京大学経済学院の董志勇院長は、「中国は戦略的新興産業を加速的に育成し、デジタル経済と従来型経済の深い融合を推進し、新技術や新製品の開発を行うことによって、中国経済に新しいエンジンと原動力を提供し、産業チェーンとサプライチェーンの安定を図るべきだ」との見方を示した。
エンジンその3:よりハイレベルの対外開放の推進
過去40年以上にわたり、開放はずっと中国経済が急速に発展するための力強いエンジンだった。今後、この「推進装置」がもつ中国経済を促進するはたらきがますます顕在化するとみられる。
中国は国内の大きな循環を主体としつつ、国内と国際的な2つの循環「双循環」が相互に作用し合う新たな発展構造を構築することを、発展の全局面に関わる重大な戦略的任務とみている。より高いレベルの対外開放を実施し、国内産業がグローバル市場とグローバル資源を利用してさらに上のステージへ上るようにすることが、新たな発展局面というテーマの中に必ず含まれる内容だ。
最近、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の調印の推進から、中国・欧州連合(EU)投資協定の締結、さらには環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)への加盟の積極的な検討まで、中国の開放拡大ペースがますますスピードアップしている。
中国国際経済交流センターの魏建国副理事長は、「これからの中国の開放の重点は市場化、法治化、国際化された市場システムを早急に整備することだ。このシステムは公開性と透明性を十分に体現し、国内資本企業と外資系企業を同列に見なし、各種企業が権利の平等、ルールの平等、機会の平等を真に享受できるようにするものでなければならない」と述べた。
このほか、急速にヒートアップしているデジタル経済やスマート産業、持続的に推進される都市化プロセスと都市圏の建設なども、中国経済の新たな可能性を切り開くことになる。こうした新たなエンジンをめぐり、第14次五カ年計画がどのように基調を定めるか、政府活動報告がどのような計画を打ち出すかが、今年の両会の注目点となっている。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年2月23日