もともと9.9元(1元は約17.1円)だった枝豆スナックが、特売でわずか1.7元だった。希望小売価格10.8元のネットで人気のフルーツサワーが、3.1元で売られていた……北京の消費者の王さんは、消費期限が近づいた特売品を販売するスーパー「好特売」を初めて訪れた後、こんな風に「戦利品」を見せてくれた。
消費期限近くの特売品ビジネスが盛り上がりを見せている。2021年3月、天津市の「食恵邦」はエンジェル投資家から数千万元の資金を調達した。4月には南京市のディスカウントスーパー「小象生活」もエンジェル投資家から1千万元の資金を調達したと発表した。この業界の第1グループに位置づけられる「好特売」はなんと8ヶ月間で4回の資金調達を行ったという。ホットマネーの流入に、食べ残しを禁止する「食品浪費対策法」という政策面の好材料も加わり、消費期限近くの特売品に注目が集まった。
北京市の消費期限近くの特売品スーパーのブランド創設者の趙麗さん(仮名)の話によると、消費期限が近い特売品がこれほど人気を集める主な原因は安さにある。商品が品質保証期間の3分の1から半分を過ぎると、メーカーはなんとかして在庫を一掃したいと考えるようになる。これが消費期限近くの特売品の主な流入経路だ。消費者側から見ると、消費期限が迫った食品は若者とホワイトカラー層に認知されており、彼らは「消費期限が近いこと」と「消費期限を過ぎたこと」をきちんと区別し、理性的な消費とコストパフォーマンスを追求する。ビジネスモデルを見ると、消費期限近くの特売品がよりよく発揮するのはルートとしての機能だ。消費者は特売品の店で低価格の商品を見つけられるだけでなく、期限まで十分な時間がある商品を割引価格で買うこともできる。「うちの店では、消費期限近くの商品と期限まで間がある商品の割合は半々くらいで、後者も従来のルートで買うより安い」という。
海外では、消費期限近くの特売品には長い歴史がある。日本のディスカウントショップ「ドン・キホーテ」は、18平方メートルの売れ残り商品を扱う店だったのが、今や700以上の支店をもつ独自の小売業態へと発展し、31年連続で業績はプラスだ。米国のダラー・ゼネラルでは、取り扱う商品の80%が価格5ドル(1ドルは約110.1円)以下で、こちらも30年連続で売り上げはプラスだ。
中国でも、消費期限近くの特売品は実は目新しいものではない。いたるところで見かける輸入食品のディスカウント店はこの業界の形態の1つだ。これまでずっと大きな動きのなかった消費期限が近い特売品が、なぜ中国で突然、爆発的な人気になったのか。どうして現在の人気投資先になったのか。これは新型コロナウイルス感染症がこの業界に与えた「触媒作用」と切り離せない。
趙さんは4年にわたりコンビニチェーンのサプライチェーンで働いた経験がある。2020年に感染症が発生すると、従来のスーパーのルートが期間はさまざまながら相次いで休業を打ち出した。趙さんは、「従来のスーパー、コンビニは商品の品質保証期間について入庫管理を行い、不要になった消費期限近くの商品はどうするかと言えば、特売品にして売り切ることが重要なルートになる」と説明した。
小規模ブランドは大規模な売り場に参入する際に価格交渉する力がないため、新たな販売チャネルの登場を望んでいた。加工費用が安いOEM(相手先ブランド製造)は、ルートと直接手を結ぶことを希望していた。感染症で売り上げの見通しが悪化し、輸出が制限され、工場では生産能力に余剰が出た。こうしたことが追い風になった。「小象生活」創業者の粟海輝さんは、「海外での経験を踏まえると、米国や日本では消費期限近くの特売品市場が経済の下ぶれ期間に爆発的に成長している。そのため感染症により中国国内の多くの機関と起業家がチャンスを見いだした。消費期限近くの特売品は通常は買取仕入れであるため、運営者には資金力があることが求められる。そのため、資本が介入したことで業界全体の拡張ペースが加速した」との見方を示した。(編集KS)
「人民網日本語版」2021年6月21日