高所得国入り間近の中国 今後の課題は経済の安定

人民中国  |  2022-03-02

高所得国入り間近の中国 今後の課題は経済の安定。昨年の経済全般について、ポジティブな意味でまず印象深かったのは、新エネルギー車の販売台数の352万1000台という数字だ。これはすごい…

タグ:経済の安定

発信時間:2022-03-02 11:05:42 | チャイナネット | 編集者にメールを送る


東京大学社会科学研究所教授 丸川知雄(談)

中国国家統計局が今年1月17日に発表した経済データによると、昨年の中国のGDP(国内総生産)は114兆元を超え、前年比8・1%増となった。私は9%に届くかと思っていたため、予想よりは低かった。

なぜ9%と予想したかというと、20年の数値がとても低かったからだ。しかし20年後半にはかなり回復していたため、その勢いでいけば9%もあり得たと思っている。

昨年は中国経済においていくつかのトラブルがあったと思う。例えば恒大集団という中国第2位の不動産業者の経営がほぼ行き詰まってしまい、次第によってはこの影響が中国の不動産全体に波及する可能性もあった。8月から10月にかけて電力が不足し、工場の操業を止めるという事態もあった。

昨年の経済全般について、ポジティブな意味でまず印象深かったのは、新エネルギー車の販売台数の352万1000台という数字だ。これはすごい。この数字は、ブラジルやメキシコ、韓国などの自動車生産台数が多い国における自動車全体の生産規模に匹敵する。

もう一つ、大企業2社が破産ないしそれに近い状況になってしまったことも印象深い。半導体の紫光集団は完全に破産し、前述の恒大集団も破産しそうな状況だ。2社とも、政府はどうも破産を食い止める意思はないようで、とりあえず破産させて整理をするのだろう。ここで救ってしまったらより大きな問題が起きるはずだから、破産自体に対しては、私はポジティブに捉えている。市場からこの会社は駄目と言われた、ということを尊重して一旦破産させ、もう一度会社を立て直すということだろう。これは適切な処置だ。


経済の安定的発展を目指すべき

一部研究機関は今年の中国のGDP成長率が5・1%に達するとみているようだ。これが今の中国の実力だということだろう。私自身の予想は、良くて5%台、むしろ4%台でも悪くないと考えている。

その理由はこうだ。

最近の発表で分かったとおり、昨年の中国の1人当たりのGDPは1万2552米㌦であり、昨年7月に世界銀行が設定した高所得国の最新基準であるGNI(国民総所得)の1万2695米㌦以上という数字に肉薄している。これは世界銀行の分類で言うと、ほぼ高所得国の境目にあるレベルということだ。私は中国が高所得国になるのは24年くらいと考えていたが、21年、つまり昨年はギリギリで超えなかったため、今年は恐らく超えると予想できる。よって今の中国は、経済発展の大きな課題を達成し、世界的にはほぼ高所得国の仲間入りを果たしていると言える。今後は成長のためにあくせくするのではなく、安定性について考えるべきだろう。

 意外な情報は、人口がほぼ横ばいでわずか48万人しか増えなかったということだ。これも予想よりかなり早かった。大方の予想では、30年くらいをピークに減少し始めるというものだろうが、この数字を見る限りでは、今年から減少が始まるかもしれない。人口が横ばいであれば、1人当たりの成長率がほぼ4%ということだから、十分な数値だろう。人口増加がこの状態でもなおさら高い成長率を望んでしまうと、バブルになるなどの諸問題が出てくる。

人口が増えなくなれば、中国の経済成長は技術進歩か、もしくは資本の増加に頼るしかない。

昨年の中央経済活動会議の決議文を読んだが、私がこの決議文の中で注目したのは、「資本の特性と行為規則を正確に認識し把握しなければいけない」という部分と、さらに「社会主義市場経済は一つの偉大な創造である。社会主義市場経済の中にはもちろん各種形態の資本がある。資本の生産要素としても積極的な作用は果たせなければならないが、同時にその消極的作用を有効にコントロールすべきである。資本に交通信号を設け、資本に対して有効な監督・管理をし、資本の野蛮な成長を防止しなければならない」という部分だ。

このような文言は今までに見たことがない。ずばり言うと、資本主義に対して一定の監督をしてコントロールしようということだと思う。この背後には、寡占傾向が見られる資本に対する監督と管理という課題がある。現在、中国の一部IT企業はすでに一般企業の枠組みを超えて中国の情報インフラを担っている。中国の人々の生活はそこに依存し、非常に独占性が高くなっている。

民間資本の自生的な発展が今までの中国の成長の推進役だったことは否定できず、中国の技術進歩を推し進めてきた立役者でもあるのだから、資本の成長の勢いを失わぬよう注意すべきではある。また、一部IT企業は独占的であるが、大多数の民間企業は激しい競争の下に置かれている。従って、実際に「資本を監督・管理する」に当たっては、各企業をカテゴリー分けするなどして、弊害のみを排除する工夫が必要だろう。

今後の成長には資本の勢いだけではなく、政府の役割が重要という側面もあるだろう。例えば自動運転は、民間資本の自生的な発展のみでの進歩はあり得ない。道路や交通信号などの政府の役割が重要だからだ。政府が諸条件を整え、必要であれば適切に規制を設けるなど、民間との調整が重要だろう。

中央経済活動会議の決議文の中で、中国の昨今の経済政策の基調であるサプライサイドの構造改革を中心にするという点は維持されていた。日本のように低金利でお金をどんどん供給する道は取らず、金融を極端に緩める意思はないと理解している。インフラ建設を適度に前倒しして進めるという文言があったが、これは少々景気が低迷しそうだからインフラ建設を積極的に推進したいということと理解している。


CPTPPが中国の国有企業改革を手助け

国際貿易に関して、今年の日中両国は重要な協力の余地があり、課題も抱えている。

今年1月、日中韓3カ国を含む15カ国による地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が発効した。これで日中韓が初めて一つの自由貿易協定に入るため、日本経済にとっては非常にプラスの影響が大きく、日本企業にとってはビジネスチャンスが多くなるだろう。しかしそれを生かそうという企業の気概がなければ、それは単なるチャンスにとどまってしまう。

誰が主導権を持っても良いから、まずはRCEPを発展させることが大切だ。今の形を完成形とせず、単なる貿易自由化からより範囲を広げてより充実させることができればと願っている。

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)は、今年の日中関係において注目に値する話題だ。昨年9月、中国は正式にCPTPPへの加入を申請したが、議長国の一つである日本は慎重に見守る姿勢だ。

米国が中国を国際舞台からはじき出そうと画策を続けていることが、中国の加入の動機の一つだろう。どこかの国を仲間外れにするような国際貿易体制など、元々あってはいけないことだ。よって私は中国がCPTPP加入の努力をするのにも賛成だし、日本も含めた他国が後押しをするのにも賛成だ。

中国には国有企業への補助金と電子商取引データの管理という障害があるため、CPTPP加入は決して容易ではないだろう。現在、中国には国有企業が20万社ほどある。その国有企業を全てなくすのは不可能なのだから、貿易に影響を与えないようにすべきだろう。国有企業への補助金で輸出を伸ばしたりすることがいけないから、その点についてよく説明することが必要だ。よって国有企業の問題は解決不可能な問題だとは思っていない。

もう一つの電子商取引だが、データを国内に置くことを強制してはいけないという文言がCPTPPの条文の中にあり、中国の法律と矛盾するのが目下の問題だ。しかしこれは中国だけの問題ではないと私は見ている。欧州はデータのフリーフロー(国境を越えてデータが自由に行き交うこと)への否定的な見解が主流だし、日本も同様だ。よってこの問題については中国が加盟国に合わせるのではなく、しっかりと協議の上、重要な個人情報は本人の同意なしで国外に出さないなどの新ルールを設ければ、折り合える可能性はあるだろう。

しかし何と言っても大切なのは、全ての加盟国が中国とこうした問題について話し合うことだ。WTO(世界貿易機関)加入の時も、中国は特に厳しい条件を課されて頑張った。中国にとっても国有企業改革のきっかけにもなるだろうから、CPTPP加入という目標を設け、改革をより一層進めてもらいたい。

(王朝陽=聞き手 呉文欽=構成)


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