デジタル経済時代において、AIやビッグデータなどの産業の急速な発展に伴い、データ要素の力と重要性が日増しに顕在化している。それと同時に、ユーザーのデータと情報が大量に発掘・収集され、金融面のユーザーのデータ及び情報の漏洩事件が多発している。
「データ安全法」と「個人情報保護法」が昨年施行され、データ安全及び個人情報保護により厳しい要求を掲げた。今年1月6日に発表された「要素市場化配置総合改革試行全体案」は、健全なデータ流通取引規則を構築するとした。プライバシー保護コンピューティングが重要技術になる可能性がある。
プライバシー保護コンピューティングは、1人もしくは2人以上の参加者が共同計算する技術とシステムの一種だ。参加者は各自のデータを漏洩しないことを前提とし、参加者たちのデータの共同の機械学習と分析を行う。プライバシー保護コンピューティングの枠組みにより、参加者のデータが現地を出ることはなく、データが利用可能でありながら非表示になる。
国際調査機関のIDCは報告書の中で、「デジタル経済の大きな流れにおいて、厳格化する監督管理環境は企業及び機関に対して、データ保護とデータ価値の合理的な利用の間で合理的なバランスを取るようより厳しい要求を掲げた」と指摘した。
例えば銀行のリスク管理シーンにおいて、従来の銀行は過去の返済情報、信用データ、第3者データにより貸付前の分析を行っていた。ところがこの伝統的な手段は正確ではなく、データに次元がなく、データが不足しているといった多くの問題がある。プライバシー保護コンピューティングの銀行リスク管理モデルを採用することで、第3者データを利用しモデルの有効性を高めると同時に、データの安全性とプライバシーのバランスを取ることができる。また例えばマネーロンダリングの管理において、プライバシー保護コンピューティングは暗号化パラメータの交換と共同モデリングが可能だ。マネーロンダリング対策のサンプルが少く、データの質が低いという問題を効果的に解消し、穏健で特徴が豊富なスマートモデルを形成できる。共同構築したモデルを使うことで、金融機関のマネーロンダリング対策能力を大幅に強化できる。
国内のプライバシー保護コンピューティングの主な参加者は、現在、百度、アリババ、テンセントなどの大型IT企業と、プライバシー保護コンピューティング技術に特化するClustar、華控清交、数牘科技などだ。また一部の金融機関も自主研究や、プライバシー保護コンピューティング企業との協力により模索中だ。
IDC中国金融業界市場アナリストの王晨氏は、「市場の各主要企業は現在、路線及び位置づけなどの面で多様性を持っている。企業間には競争があれば相互補完もある。今後はデータ要素の秩序正しい流通体制の構築において、より多くのデータ参加者が共に規範化と基準の十全化を促し、技術の差によるデータ流通の壁を打破し、技術と応用が透過性監督管理の要求を満たせるようにする必要がある。これによりデータチェーンにおけるデータ提供者、データの需要側、技術の提供者、監督管理者などの各主体が共に参加する、秩序正しく協力する良き環境を形成する」との見方を示した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年4月24日