灌腸は明朝の頃から流行し始め、北京の街中には、これを担いで売って歩く商人たちがたくさんいた。
現在よく見かける灌腸は、澱粉に紅曲という麹と豆腐カスを加えて練り、腸詰めのような形にして蒸してから薄くスライスし、油で揚げ、つぶしたニンニクに塩を加えたタレをかけて食べる。外はパリッと、中は柔らかく餅のような歯ごたえ。北京特色料理を出すレストランや、縁日、夜店などで食べることが出来る。
※豊年灌腸店:東四隆福寺街168号。北京で唯一残っている「灌腸」と名付けられた店だ。
豆汁は北京独特の飲み物。緑豆(リョクトウ)から春雨や澱粉を製造した後、薄緑色の残り汁を発酵させて煮込んだもの。清・乾隆帝時代には、豆汁は宮廷の食卓に出されるようになった。北京では、「豆汁を飲まざる者は本物の北京人にあらず」と昔から言われている。なぜなら、豆汁のその独特の酸味と臭いは、飲み慣れている者でなければ、なかなか口にすることが出来ないから。豆汁の飲み方にも奥義がある。まず、ボコボコといくつか泡がでるくらいの温度に沸騰させる。それから、付け合せにカラシナの根の千切りをラー油にまぶした物と、「焦圏」と呼ばれるリング形揚げパンを一緒に出す。酸っぱさの中に甘みが残り、カラシナの塩味にラー油の辛さと、「焦圏」のパリッとした香ばしさが絶品といえる。
※錦馨豆汁店ーー広渠門内大街193号。崇文区磁器口東欖杆市にある老舗。出される豆汁や焦圏は、国内貿易部が認める「中華名点心」という。