「クコ入りカフェ・ラッテは、クコをやわらかくなるまで煮て、つぶして液状にし、コーヒーの中に入れている。肝臓や腎臓によく、夜更かしをする日が多い人にとってはいい選択肢となっている」と説明するのは、「同仁堂知嘛健康」のスタッフ。1669年創業の中医薬専門店・同仁堂が最近、聞くだけで「体にいい」と感じる「中医薬コーヒー」を突然打ち出した。中国新聞網が伝えた。
北京市朝陽区双井の近くにある「同仁堂知嘛健康」店内でコーヒーやドリンクを飲む女性ら (撮影・侯宇) 。
「クコ入りコーヒー」を飲んで夜更かししても健康に
クコ入りカフェ・ラッテ、脾臓や胃にやさしいアメリカン・コーヒー、益母草&ローズ入りカフェ・ラッテ、むくみが取れる桂花&蜜煮小豆カプチーノなど、その名前を聞くだけで「ヘルシー」と感じるのではないだろうか?同仁堂コーヒーショップのバリスタ・李勝利さんは、「バリスタになって何年にもなるが、同仁堂に来てからは、中医薬という観点からコーヒーを考え、内風(めまい、しびれなどが生じる病証)を鎮め、痛みを止めるために、コーヒーにクコや陳皮(熟したミカン科のマンダリンオレンジの果皮を干したもの)、ニッケイなどの中医薬を入れ、元気をつけ、健康を促進することを意識するようになった」と話す。
しかし実際には、中医薬とコーヒーを融合させた商品は、同仁堂が「やるなら本格的に」をモットーに行う業界の垣根を越えた取り組みの氷山の一角に過ぎない。
北京市朝陽区の同仁堂・知嘛健康壹号店の1階では、ヘルシーなスープ・お粥、西洋風ケーキ・パン、ツバメの巣などのパッケージ商品が販売されている。2階は伝統的な中医薬専門店で、受付・問診・調剤・販売などのサービスが提供されている。
北京市朝陽区双井の近くにある「同仁堂知嘛健康」の店内で中医薬を調合するスタッフ (撮影・侯宇) 。
同仁堂知嘛健康のブランドPR担当者・蘇小航さんによると、コーヒーは、同仁堂の垣根を越えたコラボの主要な部分というよりは、コーヒーや日用消費財(FMCG)を活用して一人でも多くの客に来てもらい、健康体験スペースを構築するのが狙いだという。
「従来の同仁堂なら、多くの人は、病気になった時に来て診察を受け、薬を調合してもらい、脈を診てもらって帰ることを連想する。でも今後は、医食同源に基づき、食療を通して体の不調を解決し、総合的な健康の分野での取り組みを行っていきたい」と蘇さんは語る。
大手企業が「垣根を越える養生」の分野に参入
「パンクは若者の遊びで、養生は中高年が考えること」。多くの人は、クラブで遅くまで踊らなければ青春が台無しになってしまうと考えているようだ。だが、背中が曲がってしまう若者や生え際がどんどん後退する若者、健康診断の各数値が基準以上の若者が増えており、「養生」の低年齢化が今、大きな話題となっている。
ある機関が最近発表した「若者の養生消費動向報告」によると、現在、90後(1990年代生まれ)の9割以上が「養生」の意識を持っており、90後の半数以上が「養生」の道を既に歩み始めている。
「養生」の道を歩み始める第一歩は、もちろん手当たり次第に買うことだ。残業の時は「固元膏」を飲んで英気を養い、顔色が悪い日には「阿膠■(■は米へんに羔)」を食べ、肌が乾燥している時は「フリーズドライのシロキクラゲスープ」を飲み、抜け毛が気になる時は「黒芝麻(黒ゴマ)丸」を食べる。それらに本当に効果があるかは別として、心理効果は確かにあると言えるだろう。
CBNDataが阿里健康、天猫家電と共同で発表した「新食尚主義」報告書によると、「伝統的な滋養強壮商品は、2年連続で増加ペースが20%以上に達し、ここ3年、90後がオンラインで伝統的な滋養強壮・健康商品を購入する中心層となっている」という。
資料画像:夏本番の7月、甘粛省高台県で栽培されているクコが一斉に収穫期を迎える。画像は真っ赤なクコが一面に広げられた天日干しの様子(撮影・鄭耀徳)。
かつて高齢者専用の領域だった「養生」の分野に、近年は若者たちが仲間入りし、完全に溶け込んでいる。そして各老舗ブランドが業界の垣根を越えて、「養生」の分野に参入している。
今年4月、阿膠(あきょう)メーカーの東阿阿膠は、免疫力を高めるスティック包装タイプの「東阿阿膠粉」を打ち出した。低温真空連続乾燥技術を利用して、伝統的な阿膠を粉状にしてスティックに入れているため、持ち運びが便利で、保存もしやすい。また、お湯に入れるとすぐに溶け、他の飲み物に混ぜて飲むこともできる。
また「涼茶」で知られる飲料メーカーの王老吉は昨年、「養生系」ミルクティーとして、ハスの葉入りミルクティーとサトウキビ入りミルクの2種類を打ち出した。「ミルクティーはおいしいけれどカロリーが高すぎる」という問題に目を付けた商品だ。
若者のライフスタイルや養生の流れに合わせた商品開発に、こうしたブランドが躍起になっていることは一目瞭然だ。
しかし、老舗企業は、有名で強いブランド力を誇るものの、何をしても倒れることがないブランドだという意味ではない。巨額の投資をして垣根を越えた分野に参入しても、コストを全く回収することができない可能性もある。ブームが過ぎ去った後に、新しいものばかり追いかける新世代の消費者をいかにして引き留めるかが、本当に考えるべき課題だ。
消費者からは、「こうした老舗ブランドが自信を持てるように、少し時間をあげよう。時代に即して発展するにしても、見捨てられるのが怖いにしても、老舗ブランドは少なくとも謙虚に学び、いろんなことにチャレンジし、進歩し続けているのだから」という声が寄せられている。(編集KN)
「人民網日本語版」2020年8月19日