近年、中国では漢服が大流行し、街中や公園、観光地だけでなく、書店や博物館などでも、髪をアップスタイルにし、漢服をなびかせる女性らをしばしば見かける。人民日報海外版が報じた。
天猫服飾などの機関が最近発表した「2020漢服消費動向洞察報告」によると、ここ3年、漢服市場は爆発的な成長を見せている。2019年、オンラインショップ・淘宝における漢服の売上高は初めて20億元(1元は約15.4円)を超え、阿里巴巴(アリババ)のいくつかのネット販売プラットフォームで漢服を購入した消費者の数は2000万人の大台に近づいた。
漢服ブームの背後で、新興の文化消費市場が急速に成長している。
過熱を続けるブーム
「豈に衣無しと曰い、子と裳を同じうせんや(豈曰無衣、与子同袍)という漢詩があるが、漢服愛好者は互いに「同袍」という言葉で呼び合う。中国伝媒大学で中国語を専門に学ぶ女子大学生・徐芸さん(20)も「同袍」の一人で、同校のサークル「子衿漢服社」のリーダーだ。子供の頃から中国の歴史ドラマが大好きだったという彼女は、中学生の時に漢服に出会い、高校生の時にサークル・漢服社に入った。「初めは単純にきれいだと感じた。その後、好奇心が生まれ、最後は漢服の奥深い文化に完全にはまってしまった」と徐さんは言う。
「子衿漢服社」は、中国伝媒大学で13年前に立ち上げられた漢服学生サークルで、毎年、100人以上の新メンバーを迎えている。徐さんによると、サークルでは、毎年旧暦3月3日に漢服を着て公園などにでかけるほか、知識の普及講座や漢唐舞教室、古琴教室なども開設している。
「子衿漢服社」は、数多くある漢服サークルの縮図にすぎない。そして若者の間で漢服が受け入れられ、好まれるようになっていることを示す実例でもある。
動画共有サイト・bilibili(ビリビリ)では、漢服関連のup主が毎年倍増している。統計によると、19年、bilibiliの中国風スタイル愛好者の数は8347万人に達し、うち83%が24歳以下の若者だ。微博(ウェイボー)では、「漢服」関連の話題のクリック数は29億2000万回に達している。また、ショート動画共有アプリ「抖音(Tik Tok)」で「漢服」を検索すると、151万8000件の動画がヒットし、再生回数は380億6000万回に達している。
北京服装学院の蒋玉秋准教授は、「漢服を好んで着る若者がどんどん増えている。その最も根本的な原因は、伝統的な服飾文化自体に魅力があるからだ。伝統的な服の形や構造、染色・紡績技術、さらに無限のイノベーションの可能性がある。漢服はスーツやチャイナドレス、人民服などと同じで、今あるたくさんのファッションのうち一つの選択肢。多くの国、例えば日本や韓国などでは、伝統的な和服や韓服が洋服と併用され、自然に一般生活に溶け込んでいる。どんな服を着ている人に対しても、奇異の目で見ることなく平常心で接してほしい」と話す。