月への夢をかなえる衛星「嫦娥1号」 

人民中国  |  2007-12-14

月への夢をかなえる衛星「嫦娥1号」 。

タグ:嫦娥

発信時間:2007-12-14 16:13:48 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

                           文=高原

【導語】

十月二十四日、中国初の月探査衛星「嫦娥1号」が打ち上げに成功した。「嫦娥」という名前は、中国でよく知られる伝説「(じょうが)嫦娥、月に奔る」にちなんで付けられたもの。中国人にとって、月に対する憧れと想像が掻き立てられる伝説だ。

五百年前の明の時代、万虎という名の勇士が、四十七本の矢をくくりつけて飛ばすという簡易ロケットを使って宇宙に飛び立とうと試み、命を落とした。世界の科学者たちはこのことを忘れず、万虎は「一番初めにロケットに乗って宇宙へ飛び立とうとした人」と認識されている。月面には彼の名を冠したクレーターもある。

そして今日、「嫦娥1号」が月に向かって打ち上げられた。先人の宇宙への憧れと持続可能な発展のための資源を探求するという人類の願いを載せて。

【本文】

新型エネルギーを求めて

「嫦娥1号」には四つの主要ミッションがある。一つ目は、月面の立体映像を撮影すること。二つ目は、月面の有用元素の含有量と分布状況を分析すること。三つ目は、月の土壌の特性を観測すること。そして四つ目は、地球から月までの宇宙空間環境を調査することだ。

これらのミッションの中の課題の多くは、まだどこの国も手をつけたことがないか、完全には遂行されていない。たとえば、月全体の立体映像はまだ公表されていないし、月全体の土壌の特性と厚さの観測もまだ行われていない。米国はすでに五種類の有用元素の分布状況を公表しているが、今回「嫦娥1号」は、十四種類の分布状況を調査する予定だ。

このほか、「嫦娥1号」のもっとも注目されているミッションは、月面上の「ヘリウム3」の観測。「ヘリウム3」は、核融合発電の燃料として利用でき、百トンで全世界の一年分の発電需要を満たすことができる。また、環境にもやさしいため、将来のエネルギー問題を解決する重要な資源だとみなされている。地球上にはほとんどなく、開発も難しい「ヘリウム3」だが、月には大気層がないため、太陽風によって月面上に大量に運ばれてくる。

ある予測によると、月面上には百万~三百万の「ヘリウム3」があり、人類全体の約一万年分のエネルギー需要を満たすことができるという。

宇宙観測の第一歩

「嫦娥1号」の月探査は、中国の宇宙観測の第一歩に過ぎない。計画によると、中国の月探査プロジェクトは、次の三段階に分かれている。①月周回軌道を飛行②二〇一二年前後に月面への軟着陸を実現③二〇一七年までに月の土壌と岩石を採集して地球に持って帰る。

もっとも注目されているのは、有人の月面着陸の実現はいつかということだが、これについてはまだ具体的な計画はない。プロジェクトの総指揮官である欒恩傑さんは、「今回の打ち上げは、月への片道切符に過ぎません」と笑う。

このプロジェクトを実現させた後、中国は月をジャンプ台としてさらに広い宇宙空間で科学的観測を進める予定だ。

月は、人類がより広い宇宙空間へと向かうための理想的な乗換駅である。大気層がほとんどなく、重力も小さいため、月面から宇宙観測機や有人ロケットを打ち上げるのは、地球に比べて簡単なのだ。必要なエネルギー量も少なくてすむし、ロケットを打ち上げるときに使う原料も月で直接採集できる。

このほか、将来、火星の探査を行うときにキーポイントとなる技術もすべて月面でテストできる。宇宙飛行士の訓練も可能だ。月面上で徐々に宇宙生活に慣れることによって、火星およびさらに遠くの星への飛行の準備となる。

中国は現在、第二段階、第三段階の月探査プロジェクトのために、月面車の開発を進めている。この月面車は、月だけに用いられるわけではない。科学者たちは、将来の月面車を少し改良し、その後の火星着陸にも応用したいと考えている。

「嫦娥1号」と「かぐや」

一九九九年に月探査計画を始めた日本の月探査衛星と、二〇〇四年に始めた中国の月探査衛星が、偶然にも、どちらも自国の月に関する伝説の登場人物にちなんで名づけられているというのは興味深い。日本の「かぐや」は「嫦娥1号」の一カ月ほど前に打ち上げられた。しかしその働きやミッションは異なり、競争関係は存在しない。かえって、相互補助の関係にあるといえるだろう。

「嫦娥1号」の主要目的は月面の元素と土壌の特性を観測することにある。この観測は、月の資源の探求の始まりでもあり、高効率でクリーンなエネルギーの採集を目指す。一方「かぐや」の主要目的は、月の起源や太陽の月、地球に対する影響を研究することにあり、より高度な科学的探究の意義を含む。

高精度な月面の映像を撮影し、月の環境を観測するという役割の上では、「嫦娥1号」と「かぐや」はある程度重なるところがある。両者とも、今後、月面基地を建設するための準備をしているのだ。

中国、日本以外にも、インドやEUの国々が相次いで月探査計画を打ち出しているが、目的や働きはそれぞれ異なる。昔に比べ、今日の月探査プロジェクトはより開放された科学探究活動となっているといえるだろう。

中国も今回のプロジェクトの過程の中で、米国や日本、ロシアなど多くの国と協力して学術会議を開き、観測データを共有して、宇宙を探求するという人類の夢をともに実現しようと試みている。

【資料】

嫦娥、月に奔る

この伝説についてはいくつかのバージョンがあるが、中国で一般的に知られているのは次のようなもの。

弓の名手・后羿はある日、西王母(西方の崑崙山に住むとされる中国の伝説の女神)から飲むと仙人になれるという「仙薬」をもらった。しかし后羿は妻の嫦娥一人を残して仙人になるわけにはいかないと、その薬をしばらく保管しておくよう嫦娥に渡した。ところがあるとき、その薬が他人に奪われそうになり、嫦娥はあわててそれを飲んだところ、天に舞い上がってしまった。夫・后羿のことが気がかりだった嫦娥は、人間の世界に最も近い月に住むことにした。

嫦娥が天に舞い上がったとき、一匹のウサギを抱えていた。そのため、そのウサギも一緒に月に昇り、「玉兎」(月にいる白いウサギ)になった。玉兎はいつも嫦娥のそばに座り、杵でつついて不老不死の薬を作っている。

月についてはもう一つ、呉剛という人物の伝説がある。

毎日遊び暮らしていた呉剛は、あるとき突然、仙人になりたいと家を飛び出した。しかし修行中に仙人を怒らせたため、月へ流刑となり、高さ500丈以上もある桂の木を切り倒しに行かされた。ところがこの木はいくら切り込みを入れても、自然と元通りになる力があり、永遠に切り倒すことができない。そこで呉剛は、今でも月で一時も休まず、桂の木を切り倒しているという。

「人民中国」より 2007年12月14日

 

人民中国2007年12月号目次

★Personality 「旅途中的家」を切り盛りする 楊子さん

★メディアフォーカス

『瞭望東方週刊』 中日韓の相互イメージは

「中日韓共同世論調査」の結果を解説。中韓では日本へのよくないイメージはぬぐえないものの、五分の四を超える人が、将来の日本との関係には確固たる自信を持っている。また、中日韓いずれの国民も環境保護、食品の安全、地域の平和、文化交流などの課題に関心を寄せ、民間の交流と協力の促進への思いを同じくしている。経済面における三国相互の影響は、相互依存の密接な関係にあると考えられ、経済発展は、三国が相互信頼の基礎を確立し、平和を推進する触媒であることがわかる。

『新世紀週刊』 アルバイト学生の権利を守れ

社会的な実践経験を積もうと、夏休みにアルバイトをする大学生、高校生は五百万人に達するが、労働中に災害にあおうと『労働法』に助けてはもらえない。しかし、『労働法』の条文の修正を呼びかける弁護士、アルバイト学生の最低賃金基準の制定を企業に要求する地方の労働監察部門などが登場し、注目が集まる。今年七月、教育部および財政部が働きながら学ぶ学生の権益保護政策に乗り出した。

『三聯生活週刊』 中国の直面する環境問題

相次いで「石油不足」「電力不足」「石炭不足」に見舞われ、日に日に緊迫する環境問題。「人口、資源、環境」問題に、1996年に打ち出した政策「持続可能な発展戦略の実施」は中国政府の重要な議題として、2006年、「環境友好型社会の建設の加速」、2007年、「節能減排 (省エネと排出抑制) 」を展開。中国が「環境友好型社会」を確立するための必然の選択の軌跡を紹介。

★チャイナ・ストリーム

テレビドラマ『金婚』

ある中国人家庭の50年

一九五六年に結婚した夫婦の二〇〇六年の金婚までの五十年間の物語を、一年をドラマ一回分とし全五十回で構成した全国で話題のドラマ『金婚』。各時代の歴史より、家庭における夫婦関係、親子関係、嫁姑関係、性の問題を話し合うことや、不倫や更年期を描き、欲望や自然な欲求、生理的な反応、人生の異なる段階における微妙な思いについて寛容にとらえることで、伝統的観念における敏感な話題について正面から向き合あっている。

■特集

中軸線に沿い再生する北京

古の姿がよみがえる 永定門

激動の歴史を記憶する 故宮周辺

昔も今も文化の発信地 鼓楼・鐘楼周辺

延長線上の新たな景観 奥林匹克公園

★レポート キーワードから見る中国のこれから

★北京・東眺西望(最終回)

「同一个世界 同一个夢想」

十世紀からの約千年にわたって、北京は、契丹族の遼、女真族の金、蒙古族の元、漢族の明、満州族の清と、さまざまな民族の都となってきた。北京を舞台に、農耕民族、遊牧民族、狩猟民族が一つに溶けあって暮らしてきたのだ。『論語』の教える「和をもって貴しとなす」や「和して同ぜず」の精神が生きている。

★放談ざっくばらん

実を結んだ中国登山界との交流

中国は、世界でもっとも多くの高峰を持つ国であり、長野県は日本の代表的な山岳県である。国交正常化後、長野県は中国登山協会に対して、日本・中国合同登山研修会を提案した。一九八一年春、王振華を団長とする九名が来日。十年間に及ぶ合同技術研修で、中国の若い登山の指導者たちが育った。

★中国経済 ここがポイント48 拡大する「富裕層」がカギ

★レポート 月への夢をかなえる衛星「嫦娥1号」

★13億の生活革命59  年越しの爆竹 禁止から制限へ

★中国茶文化そぞろ歩き⑥ 大紅袍の謎を探る②

★慈覚大師円仁の足跡を尋ねて⑫

五台山での円仁(1)

「竹林寺」

★茶馬古道の旅⑩  伝説の桃源郷シャングリラ

雲南省、四川省、チベット自治区の境に接する迪慶チベット族自治州の中部に位置するシャングリラ(中甸)は、 アメリカの作家ジェームズ・ヒルトンの小説『失われた地平線』に描かれた人間の楽園、桃源郷のモデルとして知られる。このシャングリラ一帯の、千年の歴史を誇るドゥクゾン古城、新市街、伝統的な製法を守って黒陶や木碗の製作を続ける村を訪ねる。

★レポート      新中国初のパイロットを育てた

日本人教官たちの「里帰り」

一九四五年に日本が降伏した後、関東軍飛行隊の三百余人は、行き場を失った。中国共産党に指導された東北民主連軍に受け入れられた彼らは、航空学校の創立に参加し、新中国における最初の中国人パイロットを養成した。彼らは次々に帰国したが、今年六月、代表団を結成して、中国を再訪した。

★知っておくと便利 法律あれこれ36

『物権法』が立退き紛争を変えた

★邱先生の24式太極拳講座(最終回)

手を十字に組む

終わりの型

★2008年五輪ヨットレース開催地青島⑪

ヨーロッパ情趣あふれる青島

★Dear China 中国雅趣       故宮(北京)

★PR

日本で初めてのツバメの巣づくし

——世界で珍重されている高級食材「ツバメの巣」

★@China わたしと中国

経済を越えた真のパートナーに

キリスト教などの共通基盤がある欧米と違って、アジアは政治、社会、文化的な面であまりに多様であるため、地域共同体の結成が難しいといわれる。アジア全体の繁栄に地域共同体の結成が不可欠だと考え、アジアの金融協力を含む経済連携を研究テーマに決めたという東京大学人文社会系研究科博士課程に在籍、中国政府奨学生として北京語言大学に留学中の筆者。日本と中国が互いを理解し、未来について真剣に考えることが共同体結成のカギになると、直接対話を心がけている。

★名作のセリフで学ぶ中国語48

スーツケース(The Case)

(箱子)

★情報の扉

●トピックス

データで見る中国

★快楽学唱中文歌♪ ~エンタメ・キューブ~

愛楽団 『放開』

★窓・編集後記

〔とじ込みページ〕

○中国の切手 五大連池

○民間芸術の中の戯曲物語⑫ 『三英戦呂布』

○読者アンケート

特別付録 2008年カレンダー

2007年度『人民中国』記事総目次

 

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