林国本
さいきん、中国国民党の呉伯雄名誉主席と会見した際の胡錦涛中国共産党総書記の談話に目を通す機会があったが、海外に生まれ育ち、祖国に帰って来てジャーナリズムの世界で定年まで勤務し、第一線から退いてからも、ジャーナリズムの世界の一角で頑張りつづけている人間の1人として深い感銘を覚えた。
私は中国の現代史に興味を持っているので、中国の清朝末期の国運の衰退、産業革命に乗り遅れたことなどによる西側列強の侵略などの章節に目を通すたびに、暗い気持ちになることは避けられなかった。中国で甲午戦争と称され、日本では一応日清戦争といわれている戦いに敗れ、台湾の割譲を余儀なくされた段落になると、さらに暗い気持ちになる。
立場を換えて見ると、祖国から見捨てられてしまった台湾同胞の悲しみ、戸惑いはいかばかりのものであったのだろうか。私の知人、先輩で植民地主義者に抵抗し、中国共産党に入って戦いつづけた人もいるが、私は今でもこの人たちに敬意を表わしつづけている。しかし、植民地主義者に媚を売るようになった人間がいることも確かだし、少数ではあるが、自分たちが中国の福建省などを父祖の地とすることすらすっかり忘れ去って、「台独」という時代錯誤もはなはだしいことを主張している人さえいる。