■レイティング制度は観客のため
フー・ピン監督がこの討論で繰り返し強調したのは、レイティング制度は本質的には観客のためにあるという点だ。「製作者側の創作の自由を確保するためにあるとの誤解がこれまであった」というフー・ピン監督。「もちろん自由な環境はよりよい作品づくりにとって不可欠なもの」としつつも、「レイティング制度は観客のサービスのためにある。等級は異なる年齢の観客にどの種類の映画をみればいいのかを提示すると同時に、当然製作側も異なる年齢の観客に向けて、それぞれのニーズに合わせた種類と尺度の映画を製作することができる」と主張した。
この意見に関して、シエ・フェイ監督とワン・シャオシュワイ監督も同意を示している。シエ・フェイ監督は「等級は自由を得るためではなく、異なる年齢の観客を保護し、健全な映画市場を築くためにある」と語る。
チャン・ユエン監督も子供の観客を守るという視点からレイティング制度の重要性を主張する。「レイティング制度がない状況は暴力的・性的な描写などを多く含んだ映画を子供に見せることになり、子供にとって弊害だ。同時に大人の好みに合った映画を製作できないことになり、大人に対しても無責任だ」。また「子供と大人を同じ映画館に入場させる事はお互いにとって良くない。子供に悪い影響を与えると同時に、大人の知力も低下させる。子供たちが暴力的・性的描写を含んだ映画や難しい内容の映画を見ることを制限し、大人向けの作品を製作すれば、映画に対する大人の興味を高めることにもつながる」と主張する。
シエ・フェイ監督が昨年12月15日に投稿した意見書の中には、過去に審査問題のために公開を禁止された監督や作品についても触れており、自分が芸術アドバイザーとして担当した一部映画も「問題映画」とされ、申請後4カ月たっても審査結果が出ていないものがあるとしている。また、シエ・フェイ監督は、現行の行政管理型の映画審査を「法律の規制、行政の監督の下で、業界による自主自律的な映画レイティング制度」に改革する必要性を強調。「これは時代の発展の上でも必要である」としている。現行の映画審査制に関しては、「文化娯楽市場の繁栄を制約し、芸術思想の探索を扼殺(やくさつ)し、行政管理の資源を浪費させる」と指摘する。
「昨年、映画管理当局の審査を通過した映画は791本あるが、実際に映画館で観客が見ることができた映画は200本にも満たない。販売されたものはもっと少ない。一体、どのぐらいのプロジェクトと審査作業に意味なく資源が浪費されているのだろうか。実際、DVDやテレビ、国内外の各種映画祭で放映された映画で『審査』を受けていない『地下映画』の数は非常に多い。さらに現在流行り始めている膨大な数のネットムービーやミニムービーなどをすべて審査できるわけがない」。
シエ・フェイ監督は「多くの国で実施されているレイティング制度にならって、国内の中国都市映画館発展協会と中国映画製作者協会などの行政組織がレイティング制度の基準および実施規則を策定・実施することは全く可能だ。昨年2月に北京博納星光映画館管理株式会社が経営する一部映画館で、公開映画の対象年齢の表示を始めたのも有効な試みだ」と語る。