ところで、放射性廃棄物を輸入することはメリットばかりだろうか。これはロシアでずっと論争を招いてきたことである。国内の環境保護団体の反核論者は、1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故の傷あとは、まだ完全に消えたわけではないと考えている。もし、更に大量の廃棄物を輸入すれば、ロシアの生態系は新たな災難に見舞われるだろうと指摘している。
また、ロシアが現在所有している処理施設の一部は老朽化が深刻で、再処理と保管に使用するにはあまりにも危険である。ロシアの主要な処理施設である「マヤック核施設」がその典型的な例である。この施設は旧ソ連が核爆弾の研究開発を行なうために、1940年代から使用されていた。現在は毎年およそ400トンの放射性廃棄物を処理している。ドイツは、このマヤック核施設に廃棄物を輸送し処理しようと試みたが、ドイツの反核団体とロシアの環境保護団体の強い反対により、計画は白紙に戻された。
ロシア以外の国々も放射性廃棄物の処理と言う市場競争に乗り出している。イギリス、日本、ドイツ、イタリアなどの9カ国は協定を締結し、原子力発電所の使用済み核燃料を輸入して再処理し、核燃料として再びもとの国へと輸出することで同意している。そして、イギリスは、使用済みの核燃料を保管しておくことも大きなビジネスになると考え、政策を修正し、使用済み核燃料を保管する費用を他国から徴収しようとした。しかし、政策が発表される前に、反核団体の猛烈な抗議を受け、イギリス政府は「恥知らず」と罵られた。なぜなら、イギリスは自国で排出した使用済み核燃料の処理にも困っているのだ。その上、国外から輸入するなど「ゴミ」を輸入するのと同じことである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年1月14日