地球温暖化に伴い、植生地や動物の生息地に変化が生じている。許智宏氏は「長年の環境調査で保護区の状態を明確に理解することで的確な措置がとれる」と述べ、具体的な例をあげた。北西部の一部保護区ではターキンが大きく成長し、食べる草の量が多く、繁殖が速いが、草がなくなれば動物は食べるものがなくなる。このような状況は人が関与して生態のバランスをとる必要がある。
許智宏氏は、「我々の自然調査はまだ初期段階で、多くの保護区が新設備を導入して資料収集を開始しただけで、必要なデータ収集に科学を利用していない。そのため、人と生物圏委員会は研修を行い、これらの資料をどのように生かし、科学者なしでできるかを教える必要がある。実は少しの訓練でデータの初期処理ができるようになる」と述べた。
ブラックテクノロジーが保護区に「意外な収穫」もたらす
許智宏氏によると、現在はドローンや赤外線カメラがあり、調査の作業効率は大幅に上がった。以前は巡回員が昼間に巡回し、大変なだけでなく、多くの動物が夜に活動するためデータ収集に限界があった。しかし現在は赤外線カメラを設置しておけば、1カ月後に大量の資料を取得できる。
四川臥龍自然保護区の施小剛氏は、「2009年に赤外線カメラを初めて導入し、臥龍にユキヒョウがいることがわかった」と話した。保護区の末端の従業員である施小剛氏は先日、2018年中国生物圏保護区ネットワークのエコ衛士賞を受賞した。臥龍で勤務して26年間、パンダやユキヒョウと接触するという彼の経験は多くの人に羨ましがられる。
しかし、実際は想像を絶する大変さである。施小剛氏によると、臥龍は高山峡谷地帯に位置し、非常に険しい。ユキヒョウ調査エリアは角度60~90度の斜面で、標高は5000メートル以上、年中雪が積もっている。
2016年、全エリア463平方キロメートルで赤外線・紫外線設備のネットワーク化を実施し、1年で1000枚以上のユキヒョウ生息地の写真と32分間の映像を収集した。施小剛氏によると、ヒョウの柄から、臥龍には少なくとも26頭のユキヒョウがいると判断された。
施小剛氏は、「今年はさらに科学的な調査を実施し、糞便や毛髪などを収集してユキヒョウのDNAや性別を鑑定する。特に、糞便の成分からユキヒョウの食物構成を分析し、バーラルやナキウサギなどの主食を突き止める。これらの食物の状況を把握し、ユキヒョウの生存ニーズを満たせるかを判断する」と述べた。
野外収集したデータが多いほど、分析の正確率は上がる。彼らは5年のユキヒョウ調査計画を制定し、施小剛氏は期待を寄せている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年8月4日