先日成田空港からの北京便にのる際に、搭乗ゲート近くの免税店をのぞきましたら、明治から発売されている粉ミルクの缶がおいてありました。日本の名産品や免税品の代表格たるお酒、タバコ、化粧品などはわかるのですが、なぜ粉ミルク??と思ったものでした。それとは別に、北京大学大学院の女子学生さんからその数週間前に質問されたことを思い出しました。「日本から粉ミルクを輸入するにはどうすればいいのですか?」。というものでした。あまり会話をしたことがなかった学生さんからの質問でしたので、僕に問い合せるほどどうしても必要なものなのかな???というか中国で買えるのになぜわざわざ輸送代をいれてまで、日本から買いたいのだろう???とその時にも不思議に思ったんです。
これら2つのことが、果たして関連しているのかどうかわかりませんが、最近中国で粉ミルク需要が増えている可能性はありますよね(どこかのソースで統計データがでていますかね)。数年前のメラミン混入事件では、日本国内では、日本むけ輸出製品で話題になりましたが、当時は中国国内でも大きく取り上げられていたと記憶します。そして、中国のスーパーなどからも、有名ブランドの乳製品(とくに牛乳)がのきなみ撤去されていました。(唯一大手では、三元などが問題が発生せずに、商品陳列スペースを確保していたような気がします。)
この中国内粉ミルク需要増加現象が、日本ブランド安全性への信頼によるものなのか、中国内国産ブランド安全性への信頼がないからなのか、また、その両方からなのか、ということが数年前のメラミン混入事件から現在までの小さな安全性事件をふまえると、直感的な要因として想像できるものですが、一般的に粉ミルクの直接の消費者が主に乳児であり(あまり粉ミルクを成人が頻繁に、高額を支払ってのむというイメージはありませんよね)、お金を支払うのがその養育者であることを考えると、とりわけ粉ミルクは、コスト度外視で安全性への弾力性が高い財であるといえるでしょう。
ゆえに、粉ミルクは「毒性安全」弾力性が高い財であるために、こうした現象が顕著な例なのだと思いますが、こうした「毒性安全」弾力性については、その高低によらず、中国でも重視されるようになってきているのでしょう。先日のリサイクルオイルの使用と身体への悪影響について、中国内で話題になりましたが、実際に安全性が確保されたものが使用されているのかどうかの実態・直接的な問題と、それが、話題となり表面化するというのは切り離されている問題ですから、ここ最近、後者が注目され、解決され始めたというところでしょうね(つまり、まだたくさんの表面化していない問題が多くある可能性)。
さて、そうなると、中国内での食品安全性の直接的な問題については、これから次第に明らかになってくると思います。粉ミルクの需要増はその一端であって、「問題の実態」、「問題の発見」「問題の報道」「問題の市場影響」「市場需給バランス調整」「問題品の淘汰」というプロセスをふまえた訳ですが、他の食品についても、我々消費者としては、これからおおいにでてくることを期待しますね。中国にとって、「安全性への疑問があるものが使用されている」ということが問題なのではなく、これが表面化するか否かということが問題になるでしょう。
ミルク、アブラ、に続いて、次は何がくるでしょうか。ますます健全化された方向へ進む中国の社会システムに期待したいですね!
そして、日本の僕らにとっては(世界のほとんどの国々がそうだとおもいますが)、中国からの輸入製品にたよらなければ現在の生活はなりたたないほど依拠しています。いまは、安全性のある(とみなされる)日本製品が「製品」として日本から中国へという段階ですが、これが、安全性管理技術が「knowledge(ノウハウ知識)」として日本から中国へ移転して行く段階へと移行すると、両国にとってまたともに社会便益があがることになるとおもいます。 非常にマクロ的なテーマなので、日中両国政府の後押しがあると企業も動きやすそうですね!
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月26日