さて、「お茶関連産業」のバリューチェーン構造をみると、市場が非常に大きい(多くのみなさんが、民族、宗教などの差異によらず、世界的にお茶を飲む習慣がある)ために、各バリューチェーンのプロセスが個別企業ごとに分割される構造をとっています。日本でも有名な小売ブランドでいえば、コンビニで買えるほどに有名所では、リプトン、フォション、伊藤園、サントリー(のウーロン茶)、日東紅茶、トワイニングなどがあるでしょうか。他にもたくさんの主に茶葉を販売する企業、主にビバレッジを販売する企業などが小売ブランドとして知られていると思います。
また、紅茶に絞って価格セグメントを高価格帯にずらせば(上記の説明で言えば水平的にバリューチェーンをずらしてブランドをみてみる)、Wedgwood, Ridgeway, Mariage Freres, Williamson Magor などなどが日本に進出しているところでしょう。
こうしたブランドの中で、生産から卸、ブランド、さらに小売(店舗)までを、すべて1企業で抱えているところはほんの一握りの企業と思いますが(Liptonなどは出来ているかな)、「お茶関連産業」が産業として面白いところは、バリューチェーンの各プロセスで利益率(Profit poolなどと呼んだりします)が全く異なる点です。
各プロセス利益率に置いて、お茶の生産は極めて利益率が低いところにあり、小売ブランドは利益率が高いところにあります。お茶の生産段階で、1トン=0.1ドルだったものが、小売の段階で1トン=10ドルだとすれば、その価格差は100倍となるわけです。もちろん、単純に生産段階と小売段階での価格差=利益率の差ではないことは明らかですね、しかし、実際にお茶の場合、生産の「手間」がかからないものかどうか、、、という単純な想像をしていただければ、決して生産が「手間として簡単」なものであるということは言えないことがわかると思います。あえて「手間」という表現を使いました。これは「コスト」ではありません(コストといってしまうと、主に貨幣的価値に還元されます)。
(次回へ続く)
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年9月6日