南Windows会社② 世界のお茶産業の潮流について

南Windows会社② 世界のお茶産業の潮流について。 それでは、「コスト」と表現を変えて、客観的な観察をしてみましょう。利益率とは言い換えれば、コストの売上に対する割合なわけです。売上が少なくてもコストが低ければ利益率は低くありませんし、売上が多くても、コストが高ければ利益率は低いわけです。つまり利益率は売上の量に関係しないわけですね…

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発信時間: 2010-09-13 10:47:54 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

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(前回からの続き)

それでは、「コスト」と表現を変えて、客観的な観察をしてみましょう。利益率とは言い換えれば、コストの売上に対する割合なわけです。売上が少なくてもコストが低ければ利益率は低くありませんし、売上が多くても、コストが高ければ利益率は低いわけです。つまり利益率は売上の量に関係しないわけですね。(ちなみに、前回のパート1最後でニュアンス的に使った表現ですが、手間=1国内物価水準下でのコスト、コスト=国際的統一物価水準下でのコスト、と読み替えれば誤解のない表現となります。経済のグローバル化が進めば、情報の非対称性が緩和され「眼前の手間」=「世界標準コスト」に近づくというようなイメージでしょうか。)

主にお茶の栽培という農業手法そして機械生産が難しいという特殊性から、そのお茶生産のほとんどのコストは、2010年現在でも「人件費」ということになります。そしてこの「人件費」がほとんどの原価構成を占めるというところが「1点目のミソ」であります。また、お茶は寒い地域では育たなかったりと、栽培地域が限定されます、結果として消費地での自国生産が需要に追いつかない場合に貿易が必須の要素になります。これが「2点目のミソ」です。この2つの要素のため数百年の昔から、発展途上国にとっては格好の輸出材となり、先進国にとっても輸入に頼らざるをえない状況なっていました。もし、人件費が高い国(現代で言えば先進国)でしかお茶が育たないような作物であったならば、歴史は変わっていたでしょう。お茶の歴史に、先進国はお茶を輸入したい国、発展途上国はお茶を輸出したい国という、「分業」の構図ができたわけです。

そんな、世界の富の分布と地理的制約をベースにしたお茶産業の発展の歴史がありましたので、つい最近まで、各国だけのDomesticな中での利益率としては、保たれていた力関係だったわけです。つまり、生産地では、人件費は安く、その割に、先進国にお茶以外の財よりは相対的に高額商品として販売できたので、その生産地内での利益率は決して悪いものではなかったわけですし、世界的な「分業」の構図を打破するまでの力関係にはならなかった、発展途上国の生産業者と先進国の小売ブランドが強く争うことはなかったわけです。しかし、お茶産業としてのバリューチェーンが近代になり成熟し(各プロセスごとの情報の非対称性がなくなってくる、同プロセス位置間での競争が激しくなる、差別化のしにくい生産プロセスの業者は持続的な生存をしにくくなる)、さらに重要なことには、先進国と発展途上国の経済的格差が縮まり、その生産プロセスと小売ブランドでの長期的な「利益率」として差が開くようになりました。

そして、現在もなお、お茶関連産業のバリューチェーン上で生産プロセスは利益率が低く、小売ブランドは利益率が高いという状況が、生産プロセスに位置する企業が「世界的分業打破」への「動機」をもってときているわけです。

冒頭の話にもどります。お茶関連産業が面白いのはなぜか。そうなんです、発展途上国の経済的地位が国際的に高まってきたことで、これまでの「利益率」の構造に歪みが出たことになるからです。たとえば、世界の最大お茶生産拠点であります、中国やインドというこの2つの国を例に出しただけでピンと来るのではないでしょうか。経済的発展の著しい大国となってきたこの両国です。生産拠点での人件費があがってきます、そして、販売価格も上がってきます(世界的な水準での物価に近づいてくる)、輸入に頼っていた先進国の小売ブランド企業は、生産能力を有しませんから、双方のバーゲニングパワーが変化します。ここで、バリューチェーン上の各プロセスに位置している個別企業は戦略を迫られるわけです。先進国に多く点在していた小売ブランドは、発展途上国内の生産拠点業者を買収するという選択を検討する必要がでてくるでしょうし、また発展途上国に多く点在していた生産拠点業者は、強くなった通貨、経済力、交渉力をもとに小売ブランドの買収を検討することになります。そう、まさに、いま、1600年、ヨーロッパ列強の東インド会社から始まった、お茶の国際取引の大きな編成が行われようとしている最中なわけです。

この数百年の歴史をみているだけでもワクワクしますし、お茶という嗜好品としての興味を個人的にひかれますし、経営学的にも面白いM&A(下流が上流を買収、上流が下流を買収、競合が水平的に買収)の話題でもありますし、興味がつきません。

さらにいえば、中国という国はその「渦中」でありますから、僕はその「現場」を目にすることもできます。単なる生産拠点だった福建省のひとつのお茶畑事業主が、小売ブランド化し、貿易も行ない、一気に大きくなるところも目にすることになるでしょう。一方で、ヨーロッパの伝統総合ブランドWedgwoodなどが、福建省に広大な生産直営拠点を設けるかもしれないわけです。

最後に、日本のお茶の話題として。

中国「茶産業」の国際的な自然の流れの中での、大変化となります。一方で、日本、何もしなくては、国際的な大変化の波で埋没しかねない日本の「茶産業」です。しかし僕としては、独特のセグメントで競争できるところもあるので、盛り上げていきたいと思います(僕の頭の中に浮かんでいるアイディアを産業振興に適用してみますので、これについてはまた別のところでお話しましょう。)。

いままさに、世界の荒波が「お茶」から巻き起こっていると行っても過言ではないでしょう。いずれにしても、めちゃくちゃ熱い世界各地の「お茶関連産業」の業界構造変化、中国で、日本で、インドで、イギリスで、フランスで・・・観察していくのはいかがでしょうか。もちろん、そんなことを考えるときには、おいしいお茶を飲みながら!

(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)

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「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年9月6日

 

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