まず、これまで高度経済成長時に代表される加工貿易をおこなってきた日本の産業全体が、近年ではその構造的問題解決のために、海外に進出することが増え、貿易(Trade)だけではない、直接的な対外投資(FDI)の状況も増えてきました(海外生産や海外販売)。この対外直接投資によって、日本企業はもはや、日本国内だけの法令や商習慣に準拠するだけでなく、投資先の海外現地での「多様なお国柄」事情に適合(Fit)していく必要が出てきたと言えます。これが1つめの要因です。
また、もうひとつ重要な要因は、多国籍化した企業内での文化多様化(Diversification)の加速です。これは、社内での人材を日本人優遇ということではなく、より海外現地採用者や日本採用者に差異がないように公平に社内での人材登用をしていくことで、社内にこれまでなかったような複合的文化による意思決定ができるようになります。例えばこの社内の文化多様性によりマーケティング策定にあたり、「国際性」と「現地性」をバランス感覚よく発揮できるということになります。日本人チームだけでフランスで事業展開することやフランス人チームだけでフランスで事業展開するということよりも、インド人責任者が日本人とフランス人の部下を抱えてフランスで事業展開するという事のほうが柔軟な対応ができるかもしれません。この社内文化多様化の度合いによって、国際的企業競争で他の外資企業と日本企業が競争をしたときに、優位に立てるかどうかが決まることになります。ですから、2つめの要因は、国際的企業競争力獲得のための要因です。
これら2つの要因が、最近の英語化の主たるものでありましょう。
さて、このように考えますと、企業にとっての英語化は、外部環境への適合(Fit)ならびに社内内部環境の多様化(Diversification)の為であります。確かにこれは、企業の海外現地での活動をより円滑なものとしますし、現地子会社と親会社(日本)とのコミュニケーションも活発化します、また、社内の人材も国籍に偏ること無く公平な競争がうまれるなど、ロジックとしては様々なプラスの側面が多いように直感的に思われます。
しかしながら、英語化が問題となるのは、その実行可能性であります。言語というのは、その企業体のすべてを規定しているといっても過言ではありません。株主や顧客といった直接の取引相手だけではなく、社会のあらゆる関係に根ざした利害関係者(ステークホルダー)と企業体とのコミュニケーションがあります。
(次回へ続く)
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年2月21日