ガス田「天外天」は、ガス田「春暁」と同様、石油採掘専門家の言う「東中国海盆地の西湖凹陥」に位置する。東中国海盆地とは、福建省や浙江省の東、台湾の北、韓国の南にあり、26万平方キロにわたって広がる地域を指す。この地域には4つの低地と3つの隆起がある。「西湖凹陥」はそのうちの長さ400キロ、幅150キロの地域だ。資源調査の結果、この地域には天然ガスが豊富にあることがわかっており、中国近海の重要なガス田となっている。埋蔵資源は天然ガスを中心とし、軽質原油も存在する。
「西湖凹陥」は本来、大陸棚の境界線画定問題にはかかわらない海域だ。中国石油天然気(ペトロチャイナ)はこの地域に対する資源調査と開発を早くから進めてきた。これまでに、「平湖」「宝雲亭」「武雲亭」「孔雀亭」「春暁」「天外天」「残雪」「断橋」など8つのガス田と「玉泉」「秋月」「孤山」の3つのガス含有構造が発見されている。中国海洋石油と中国石油化工、シェル、ユノカルは03年8月、「西湖凹陥」での共同開発に合意した。当時は、「春暁」「平湖」「天外天」のいずれも中日の民間世論の注目を浴びることはなかった。
東中国海の境界線画定問題は、国連海洋法条約が定める200カイリの排他的経済水域を由来としている。中日間の東中国海の幅は400カイリに満たない。中国側が大陸棚延長という原則によって経済水域を画定しようとしているのに対し、日本側は「中間線」を主張している。だがペトロチャイナが活動しているのは寧波市から東南300キロ付近の地点であり、中国側が認めない「中間線」にさえ及ばず、中日間で論争のある海域には属していない。
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