▽「疲れて帰宅して家族の顔を見る、これこそ一番の喜びです」
福岡では夏は男性が博多祇園山笠に参加する以外に、必ず花火大会が行われる。これは福岡に限ったことではない。大会当日、花火を見に大濠公園へと向かう路上で、私はキキョウや金魚の柄の浴衣を着て、草履を履いた若い女性達をたくさん見掛けた。洋服を着たサラリーマン達に混じって、一緒に電車に乗っているのだ。しかし浴衣を着ているからといってじろじろと見られるわけでもない。伝統と西洋文化がここでは共存している。
「夏は花火を観に行かなきゃ。花火に行くにはやっぱり浴衣が一番!いくら暑くっても着ます!」ある日本の女子大生がこのように私に話してくれた。普段は最新のファッションを身にまとっていても、多くの日本の若い女性は一着は美しい和服を持っている。お祭りや成人式で着るのはやはり和服であり、洋服では決してない。
人々はよく日本の伝統の中には「男尊女卑」の観念が強烈に残っているというが、仕事のストレスが極めて大きい現代日本では、妻や子供の存在が、多くのホワイトカラーやサラリーマン達にとって、つらい生活に対する活力の源となっている。私がホームステイした家庭でもそうだった。お母さんは専業主婦、お父さんは長年単身赴任生活をしており、お父さんは1カ月にわずか2回だけ飛行機で帰省し家族との団らんを過ごすことができる。しかし一家はこのような生活にも幸せを感じている。
経済の不景気に直面し、仕事探しに「理想」を追求する日本人は少なくなった。伝統的な家庭倫理は仕事をする上でひとつの大きな精神的支柱である。ホームステイでお世話になったご主人・豊原さんは語っていた。「どんな仕事をしようが、とにかく家庭を守ることです。疲れて帰宅して家族の顔を見る、これこそ一番の喜びです」。
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