事務所との「恋愛」を学ぶ

来日したばかりの頃、alanはプロデューサーとどのようなイメージで売り出すか相談した。Jポップについて詳しくなかったので、軍人としての経験やチベット民族出身であることを生かし、日本の一般的なシンガーとは異なる雄大な雰囲気を持つ曲を歌いたいと希望した。相談と調整を重ねた末、事務所はalanの希望を尊重し、「愛、地球、平和」をテーマにすることを決定。実際、このようなテーマを持つ曲が音楽市場で成功を収めるのは難しいとされている。

このほかに、テレビ出演時の衣装の丈や写真撮影での露出具合などについても、事務所はalanの意見を十分尊重してくれた。「生活面でも、周りのスタッフはよく面倒を見てくれます。仕事が忙しい時は喉をケアする薬を用意し、栄養剤の注射を受けに連れて行ってくれます。私は仕事で一番いい自分を出せればいいので、他の面では厳しく要求されていません」。

もちろん、事務所にも妥協できない面がある。日本の芸能事務所はアーティストが人々に与えるイメージを非常に重視する。代理人はalanに「車の中で弁当を食べてはいけない、ポケットに手を入れてはいけない」と要求した。これについて、alanは「アーティストはいつも人並み以上の素晴らしいパフォーマンスを見せねばならず、『世俗的』な一面を見せてはいけない」と理解している。

「アーティストは神秘的なイメージを持つ必要があります。あまりにも現実的な存在では普通の人と同じです」。こうした点について、少しずつ理解できるようになったalanは軽はずみな言動を慎み、落ち着いて行動するよう心がけている。「皆さんがどのような私をもっと気に入ってくれるのかわかりません。実際、私はごく普通の人間で、ただこのような仕事をしているだけなのです」と四川省出身の少女は矛盾した思いを語る。

事務所との関係は、「恋愛」のようなものだと感じている。「恋愛」には摩擦を経ながらも理解を深め、相互の信頼関係を築くことが必要となる。何度も自分に「事務所が私をだめにすることはない」と言い聞かせているという。