二〇一〇年上海万博日本国家館館長 江原規由
中国では、旧暦で端午節を迎えました。今年は6月16日でした。万博会場内では、端午節にちなんだイベントが各所で繰り広げられました。例えば、湖北館。そもそも端午節は屈原(注1)を偲んで生まれたとされ、湖北省岳陽は彼の故郷です。湖北館では、「ちまき」の作り方実演、外国館からの参加による「ちまき」作り方教室などが行われ、大いに賑いました。
また、上海館からは、館長名で各館の館長宛てに端午節への祝福の一言を書いてほしいと、カードが送られてきました。上海館の館刊誌に載せるとのことでした。
伝統行事の宝庫
中国は、悠久な歴史を背景に伝統行事の多い国です。日本も中国から伝来した伝統行事が少なくありません。例えば、日本の正月(中国の春節)、五月五日の端午の節句(注2)、九月九日の重陽の節句などが指摘できます。
こうした中国の伝統行事の多さは、上海万博に彩りを添えていると同時に、中国は、上海万博を通じて中国の伝統を世界に発信できるわけで、その文化的、経済的効果には計り知れないものがあります。
文化産業と上海万博
目下、中国は東西南北の各都市がアニメ、出版、映画、ゲーム、演芸などの文化産業を本気で振興しようとしています。文化と伝統は極めて密接な関係にあります。例えば、アニメ産業についてみると、その国・地域の伝統、文化、自然などを背景としたものが多く、かつてよくアニメの題材となった「孫悟空」などはその一例です。さらに、アニメ産業が世界展開するとなると、科学技術とか未来への展望などといった国境を越えた「夢」をストーリーに載せる必要があります。日本の「鉄腕アトム」などがその好例でしょう。
国内外からの万博参観者は、中国の文化・伝統に接し、また、世界に目を向け、夢を描くことでしょう。文化産業は創意産業といわれ、新たな何かを生み出す新興産業です。
湖南館での端午節開幕式
世界市場を席巻している「メイド・イン・チャイナ」は少なくありません。上海万博が、世界を魅了するような「クリエイティド(Created)・イン・チャイナ」誕生の引き金になるかもしれません。
注1 紀元前4世紀 ~ 紀元前3世紀の、中国戦国時代の楚国の政治家、詩人である。
注2 日本では「ちまき」より「柏餅」を食べるのが一般的。また、中国には「鯉のぼり」をあげる習慣はない。中国から伝来し日本で独自な展開をした伝統、文化が少なくない。
「人民中国インターネット版」より 2010年7月6日