宮崎駿監督は本当に人間嫌いなのかということがしばしばメディアなどで議論される。アニメ研究で知られる北京日本学研究センターの秦剛助教授は先般、中央民族大学で『崖の上のポニョ』に関する講演を行った際、「宮崎駿の人間批判は、すべての命への愛情に基づくのではないか」と語った。
秦剛助教授はまず、宮崎駿アニメの巨大な影響力について講演し、夏目漱石の小説『門』やリヒャルト・ワーグナーのオペラ「ニーベルングの指環」と関連付けながら、間テクスト性という方法で、『崖の上のポニョ』のテーマを複数の側面から深く分析した。
講演を行う秦剛助教授
様々な人魚伝説と比べながら『崖の上のポニョ』を分析する秦剛助教授
『崖の上のポニョ』
講演の後、中央民族大学の一人の学生が次のように質問した。「宮崎駿監督のアニメを見ると、なんとなく『人間批判』的な要素があると見受けられます。昔の作品も今の作品もそうです。10代の妹は宮崎駿監督の大ファンで、『もののけ姫』をはじめとする作品を20回以上も見たことがあります。だが、それを見ていた妹は人間にすっかり失望したようです。宮崎監督自身も、『私の映画を見るのは年2回以下がよい』とファンたちに注意しているらしいですが、果たしてそうなのでしょうか」
それに対して、秦剛助教授は、「宮崎駿監督の思考が深いほど、悲観的な色合いが濃くなります。宮崎駿の人間批判は、すべての命への愛情に基づくのではないかと思います。彼は作品の中で、人間が異類と平等に付き合い、コミュニケーションをとることを主張していますが、それこそが将来の人間社会の向かうべき道ではないでしょうか。子供の敏感さは大人よりずっと強いですから、宮崎監督は希望を子供に託しているのです」と答えた。
また、アニメの観賞の仕方について、「アニメにはいろいろな観賞の仕方があります。立て続けに何本もの作品を一気に観てしまうような、文字通りにアニメを「消費」するアニメファンもいますが、同じ作品を繰り返し観て、そして深く考えることで、アニメの中に込められた思考を共有する鑑賞法もあります。後者の方がより生産的かもしれません」と秦剛助教授は語った。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年7月4日