今年1月12日、岸田文雄首相は就任後初めて安倍晋三元首相と会食し、朝鮮が最近行ったミサイル試射への制裁強化、対中・対ロ関係について安倍氏に意見を求めた。安倍内閣の外相を長期務めていた岸田氏は、安倍氏を「裏の首相」と見ているようである。「安倍・麻生体制」は岸田内閣でも大きな影響を保ち、日本の政界の「二元権力構造」の特徴を表している。(文=劉江永 清華大学国際関係学部教授、中国中日関係史学会副会長)
過去の日本の政界に同じような現象があった。首相を経験した自民党内の最大派閥代表は退任後も重要な役割を発揮し、自民党の次期総裁を決める「キングメーカー」と言われている。しかし、退任後の日本の首相は通常、現内閣または首相の内外政策に頻繁に直接口を出すことはなく、このような「二元権力構造」は特殊で、菅義偉政権の頃と似ている点と異なる点がある。
似ている点の1つ目は、「安倍・麻生体制」は裏で今も日本の政治と内外政策の重要な役割を発揮している。2つ目は、安全と外交戦略において、安倍内閣の外相を務めていた岸田文雄氏は、「自由で開放されたインド太平洋」を引き続き推し進め、「2+2」会合を通して日米同盟および米日豪印4国体制を強化している。これらは年内に岸田内閣が改正する「国家安全保障戦略』に盛り込まれる可能性がある。3つ目は、岸田氏と安倍氏は今年7月の参議院選挙で勝利するために結束する必要があり、これは2人の共通利益と合致する。そのため、参議院選挙前に、岸田氏は安倍氏と協調を維持すると同時に、内外政策を進めたいと考えている。
異なる点は、岸田氏は自民党内の出身派閥「宏池会」を支持し、自民党総裁選挙と衆議院選挙で勝利し、長期政権維持の考えと政策を主張している。安倍氏と親しい関係にある甘利明氏の落選により、岸田氏は同派閥ナンバー2の林芳正氏を外相に任命するチャンスを手にし、中国と「建設的で安定した関係を築く」ことを望んだ。「二元権力構造」の中で、重大な問題を左右するのは誰か。岸田氏と安倍氏の間に、権力分配と政策決定で矛盾が生じることは免れない。
1つ目は、経済政策。岸田氏は選挙時に新自由主義経済がもたらす弊害を是正し、「新資本主義」を通して成長と分配のバランスを実現し、貧富の差を縮小させることを約束した。これは事実上、「アベノミクス」の否定である。安倍政権の頃、日本の世界での地位は低下し、国内の貧富の差が拡大したた。岸田氏はこれを改善したいと考えている。一方、安倍氏は、日本の金融市場が期待するのは岸田政権の経済政策に対する根本的改革ではなく、任期中の経済政策の継続だと述べた。
2つ目は、中国人権問題。岸田内閣の松野博一官房長官は、東京オリンピック組織委員会の橋本聖子会長、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長、日本パラリンピック委員会の森和之会長が北京冬季オリンピックと冬季パラリンピックに出席すると発表した。日本が政府代表団を北京冬季五輪に派遣することはなく、「特殊な言葉」でこの行動を説明することもない。安倍氏は、「これは中国との人権闘争において、日本が同じ考えの国とともに立つことを意味する」とみだりに発言した。昨年末、日本の臨時国会は高市早苗氏が提出した「中国人権問題非難」の決議を行わなかったが、今年1月17日の通常国会で、高市氏らは北京冬季五輪開幕前の2月1日に国会で議決したい考えを示した。日本の各与野党は協調的立場を具体的に示している。
3つ目は、台湾海峡問題。今年1月7日、岸田首相は就任後初めて日米「2+2」ビデオ会合で台湾海峡の平和と安定の重要性を重ねて表明し、「平和的解決」を望んだ。日米が実力で「平和な台湾独立」を後押しする危険性にも言及した。一方、安倍氏は台湾問題に関して「口出し」という形で中国に心理的脅威をもたらそうとしており、中国の内政に干渉するだけでなく、日本を岐路に立たせる可能性もある。
日本の政界に「二元権力構造」が存在することから、林芳正氏の訪中は事実上は自民党内の対中強硬派により一時的に「ブロック」され、5月までの実現は難しいとみられる。これは国交正常化50周年を迎えた中日関係にとって、マイナスである。
このような日本に対し、私たちは期待しすぎたり、非現実的な幻想を抱いたり、同じ尺度で対応してはいけない。私たちは日本が平和発展の道を歩み続けることを望んでいる。日本が平和発展のためにすることであれば、私たちは賛同、支持する。日本の平和発展のためにならない言動に対しては、責任を持って忠告し、正しく認識し、歴史に目を向けるよう促す。特に、日本の民衆に釣魚島は中国のものだという真相を理解してもらい、中国が完全な統一を実現してこそ日本の安全と中日関係の安定した発展につながることを伝える。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年1月21日