日本がなかなか不景気から抜け出せない理由に関してさまざま意見が飛び交うなか、日本ではその元凶は高齢化と出生率の低下にあると見ている。日本の高齢化は世界のはるか先を行き、それが需要の低下や労働人口の減少につながっている。そこで日本は、出生率の低下を抑制しようと、ここ数年様々な対策を打ち出し、出生率の回復に全力を傾けてきた。男性に次世代育成のために精力と時間を費やすよう呼びかけるのも、そのうちの重要な対策の一つだ。「上海証券報」が伝えた。
儒教的色彩の非常に強い日本社会には、男は外、女は内という概念が根付いている。女性は家事や子育ての一切を任される。次の調査データからこの点が見て取れる。6歳以下の子供がいる家庭で、男性が家事や子育てをする時間は、スウェーデンが1日3時間21分、米国が3時間13分、フランスが2時間30分、ドイツが3時間である一方、日本はわずか1時間というのだ。
昔、日本経済が順調だったときには、女性の多くが専業主婦をし、夫がお金を稼いで家族を養っていたため、子育てに協力しなくても女性が文句を言うことはなかった。しかし、バブル経済が破綻し、男性の給料だけでは家族を養えなくなった。女性たちが家計の足しにと社会に出てフルタイムやパートタイムで働くようになると、仕事から帰宅してから家事や子育てに追われることになる。それは並大抵のことではない。子供が増えるほど経済的な負担は増え、精神的にもきつくなる。社会のこうした風潮を変え、出生率を回復しようと、日本の関係部門が躍起になって、男性も次世代育成に力を注ぐよう叫んでいるのだ。
ある調査で、夫が家事や子育てをする時間が多い家庭ほど、2人の子供がいる確率が高いという結果が出ている。今年6月30日、日本の国会で通過した「育児・介護休業法」改正案は、男性も3カ月の育児休暇を取得できると明確に定めている。子供が小学校に上がるまで、例えば子供が病気になれば家で子供の面倒を見るために年に5日の休暇が取れる。
これまで、妻が専業主婦の場合産休は取ってはならないと規定していた企業もあったが、改正案では妻の仕事の有無に関係なく、子供が生まれればどの男性も育児休暇が取れると明確に定められた。法律では早くから明文化されているにもかかわらず、実際に08年に産休を取った女性は90.6%、男性はわずか1.23%にとどまった。その理由はいたって簡単だ。3カ月の産休から戻った後に元の仕事が確保されているか心配だからだ。
社会的な観念は相当根深く、そう簡単に変えられるものではない。企業の管理職の多くはこの改正案にいたって冷淡だ。少なくとも今の企業の評価システムでは「会社をもって家族とし」「公事に私事を挟まない」のが社員を評価する基本的な基準となっている。会社が社員の子育てを奨励するはずがない。
日本が北欧のようになろうと思えば、男性は仕事も家庭も両方疎かにできない。これは現実的に不可能だ。日本のある研究機関の調査によると、産休を望む男性は増えているが、それでも30%にすぎない。
出生率の低下には経済、社会、文化など様々な要素が絡んでくる。単一的な対策で解決できるものではない。例えば、日本の保育園への入園難は長い間未解決のままの問題だ。さらに重要になってくるのは、若者が将来をどう見ているかということだが、上記の問題が有効に解決されなければ、日本の出生率が向上することはないだろう。(上海国際問題研究院情報研究所所長 陳鴻斌)
「人民網日本語版」2010年8月13日