米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは24日、日本国債の格付けを上から3番目の「Aa2」から中国やチリ、サウジアラビアと同等の「Aa3」に1段階引き下げた。ムーディーズによる日本国債の格下げは2002年5月以来、約9年ぶりとなる。
格下げの理由に、大地震の影響と電力不足が日本の経済成長に影響を及ぼし、長期的な財政再建に必要な社会保障や税制改革に向けた取り組みが具体性に欠けることを挙げている。また政治状況について、「過去5年にわたり首相が頻繁に交代したことが、一貫した経済・財政政策の実行の妨げとなっている」としたうえで、今月末に実施される民主党代表選挙は日本の政治が派閥争いからまだ抜けきれていないことを反映していると指摘した。日本の債務は国内総生産(GDP)の2倍に相当し、国民1人あたりの負債は800万円に上り、主要先進国の中で最悪の水準にある。
市場の動きを見ると、国債の格下げが金融市場に及ぼす影響は限られている。野田佳彦財務相は取材に対し、「最近の国債入札などを見ても、順調に円滑にいっている。日本の国債に対する信認に揺らぎはない」と述べた。近く辞任する菅直人首相は遺憾の意を示すにとどまった。この日の10年物国債利回りは格下げ発表後に一時1.03%まで上昇したが、最終的に前営業日より0.005%低い1.01%で引けた。これは債券市場が格下げを予測していたことを示す。東京株式市場で日経平均株価は93.4円下げ、下げ幅は1.08%となった。市場では、格下げはアジア・太平洋株式市場の軟調な動きと近ごろの円高によるものではないと見られている。大量の国債を保有する金融機関の株価は比較的安定し、大きな影響を受けていない。