昨年、日本のある多国籍企業で働く機会があった。職場は東京都新宿区にあるオフィスビル。人気の映画「杜拉拉昇職記(ドゥ・ララの昇進物語)」を観た時、スクリーンに登場した社員食堂でのランチが、私にはうらやましくてたまらなかった。そんな私が、今回働くことになった世界500強企業の社員食堂に大きな期待を寄せたのも当然だ。しかし、同僚の吉田さんは私に、「ほとんどの日本の会社には、社員食堂はありません。お昼前となると、街中の食堂が、ランチを取るサラリーマンで溢れ返ります。我々は、混み合うのを避け、いつもランチはインスタントラーメンです」と教えてくれた。私は驚き、「毎日インスタントラーメンばかりで飽きませんか?」と尋ねた。吉田氏は「日清食品という企業が世界初のインスタントラーメンを世に送り出した1958年以来、インスタントラーメンは50年以上の歴史を誇っています。日本で発売されているインスタントラーメンの種類は、500種類以上に上っています。まだまだ食べ飽きませんね」と誇らしげに答えた。
ランチタイムになると、吉田さんの言った通り、同僚は全員、インスタントラーメンを取り出した、日清食品のような大型ブランドから無名ブランドまで、日本製から中国・韓国など外国製まで、水煮麺からそのままポリポリ食べられる麺まで、まさに多種多様だ。日本では、吉田さんのように、長年インスタントラーメンを職場で食べてきた人は少なくないようだ。
日本のインスタントラーメンと中国のインスタントラーメンの製造工程は、とても良く似ている。日本製のものは、麺の成分に蕎麦粉、サツマイモ粉、その他デンプン材料が常用され、スープの味は、日本人の口に合うよう、コンブ、シイタケ、料理酒、しょうゆ、唐辛子、ショウガ、わさびなどの原料で調合されている。具には、イカ、スルメイカ、ハマグリ、カキ、その他の貝など海鮮類が使われている場合が多い。
インスタントラーメンは、毎日が「時間との勝負」の日本人にとって、なくてはならないファーストフードであるだけではなく、「常食している美味しい食品」でもある。以前、ある日本人の友人宅に食事に招かれたことがある。テーブルに並べられた食事は全て日本料理、しかも、その多くが、お刺身、生のロブスター、生のホラ貝、生野菜、生ワカメなどの「生もの」で、食べるときに調味料をつけるだけの料理だった。これらの和食は、中華料理に慣れた私には呑み込みづらかった。最後に出てきたのがインスタントラーメンの鍋だったことは、私にとって不幸中の幸いだった。湯気が立ちこめた濃厚で香ばしいラーメンの汁、こしの強い麺。私はようやく舌鼓を打ち、お腹を満たした。
日本では、インスタントラーメンは日本文化のひとつとなっている。多くのスーパーやコンビニでは、ギフト用のインスタントラーメン詰め合わせが販売されており、同僚や友人の間では、綺麗に包装されたインスタントラーメンがプチギフトとして贈り贈られている。少しの出費でお互いの親近感もさらに増し、贈られて嫌な顔をする人はいない。日本から帰国する時、私が周りの同僚から受け取ったプレゼントで最も多かったのはインスタントラーメンだった。中国に戻った後、盛大な「インスタントラーメン・パーティ」を開くのに十分な量だった。
「人民網日本語版」2011年9月9日