以上のようにして、日本国全体(政府部門)としては、対外FDIを全面的に推進する動機は働かず、また一部の大企業を除いて多くの日本企業は対外FDIに積極的ではないといえましょう。・・・というのがこの半年の現状であります。(補足:投資総額の統計データとしては前年同時期比2倍以上というデータ等もあったと思います。大企業によるFDI増加が十分に反映されていることは事実ですが、決して2倍以上の企業数に増加、という意味ではないです。)
しかし、僕が将来あり得るシナリオを考えるならば、いくつかの大企業の対外FDIによって、バンドワゴン効果(bandwagon effect)が発生することは否定できません。これは、いくつかの大企業が行けば、同じような企業規模の他の大企業も海外に本格移転を開始するという、いわば「横並びが発生しますよ」という効果です。また、産業バリューチェーンが大企業をトップに上から下までびっちりと契約関係が成立している日本の中小企業群ですから、大企業の海外移転にともなって、中小企業の「動機如何にかかわらず」海外に移転せざるをえない中小企業が多く発生してくると思われます。これは例えば、大企業への部品納品について、ベトナムに大企業の組立工場が開設されたならば、その近くにパーツを納入する中小企業が大企業は必要となりますし(日本からわざわざ輸入するよりも安価)、納入する中小企業からしてみれば、長期的に納品機会を逸するよりも、初期投資がかさむものの、その大企業に「くっついて行かざるをえない」というような「コバンザメ的行動」に出ます。
この段階まで至りますと、日本人の大部分の「人材グローバル化」は遅々として進まないものの、日本企業だけは多国籍化します。よって、企業内部スタッフとしての日本人は全面的に世界の人材市場の中で競争することになっていきますね。日本人だから日本企業に雇用され続けやすいということは決してなくなり、日本人だから内向的、また外国語習得も不得手、現地に精通していないということがマイナス要因でしかなくなります。(もちろん、日本企業だけでなく海外企業にも、旧来型日本人人材は重宝されないのは当然です。)
話が多くの検討課題に入り込んでしまいましたが、最後にまとめますと・・・、311東日本大震災によって企業が対外FDIにすぐに行動をおこすということではないこと。しかし、長期的には大企業の「バンドワゴン効果」と中小企業の「コバンザメ的行動」によって対外FDIが増加する可能性があること。日本人はその潮流に達した時に、国際人材市場において弱い立場に置かれるであろうこと。・・・が考えられると思います。
以下、ちょっとしたトピックとして挙げさせて頂きます。