一方で、「何でも型」から「科学型」へのビジネス手法の変化においてのデメリットといえば、社会と経済の硬直化です。各企業のレベルと言うよりも、産業レベルでの問題となりますが、中国全体としての国際社会の中での産業の発展モデルが必要な時に、それが開発されないという状況です。たとえば、日本が高度経済成長で1970年代に振興した時、そして韓国がデザインソフト産業大国化で2000年代に振興した時、それぞれにあとから振り返ってみれば特有のビジネスモデルがみられました。そしてそこには、他国が気づかなかったようなビジネスモデルが隠されていました。しかしながら、中国が「科学的」にビジネスモデルを模倣することは、こうした革新的なビジネスモデルを中国が独自で生むことではありません。これはまた結局「模倣からイノベーションへ」のタイミングの議論になってしまいますが、「科学的」なビジネスモデルの中国内での現段階での発展はそういった弊害ももたらす可能性があることに留意しなければなりません。
いま、すでに中国ではサービス業部門での「科学型」への変遷がはじまっています。「科学型」は言い換えれば「模倣型・硬直型」です。日本や韓国の歴史的な例というのは、「何でも型」→「独自型」→「硬直型」ともいえる変遷でした(日本は硬直型に入ってしまって久しいですが、韓国はまだ硬直しているとは言えないかもしれません。)。中国があまりにも経済発展を急ぎすぎてしまったため(しかも、それが上手く行きすぎてしまったため)にこの「独自型」を通り越してしまった(通り越してしまう)のではないかということです。「イミテーションからイノベーションへ」の議論は、常にタイミングを問題にします。
もし通過ポイントを見過ごしていたら、中国はいつまでも「中堅」の位置でありつづけるでしょうし、一流経済国(生産性:Productivity、効率性:Efficiencyという意味で。)というよりも、二流より少し上の経済国という程度に落ち着いてしまうでしょう。
これまでのところ全産業において、イミテーションが「上手く行きすぎている」中国。果たして、タイミングを逸してしまったのではないか、といま一度振り返ってみると良いところに来ているような気がします!!??
(中川幸司 アジア経営戦略研究所上席コンサルティング研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年12月6日