日本は古来より「柔道の国」と呼ばれ、道場で白い柔道着に身を包む人々の中には、白髪で70歳を超える高齢者もいれば、まだあどけなさを残す10歳になったばかりの子どももいる。だが、このように人気のある柔道の裏には、「潜在的危険」が少なからず存在している。
先日、名古屋大学が出した、中学の部活動における競技別の年間死者数のデータによれば、柔道が2.376人で、2番目のバスケットボール(0.371人)に比べても圧倒的に多い状況だった。更に、同大学の内田良準教授も、1983年から2010年の28年間で、柔道事故で死亡した中学、高校生は全国で114人に上るとしている。また、1983年から2009年の間に柔道事故によって後遺症や障害を患った中学、高校生は全国で275名に上るという。
では、なぜ柔道が、部活動における一種の「デスゲーム」となってしまったのだろうか。
まず、中学、高校生たちの経験や技術不足によるところが大きい。名古屋大学の調査によれば、柔道事故で死亡した中学、高校生のうち、1年生が占める割合は実に半分以上だという。1年生のほとんどが柔道未経験者で、立ち回り訓練などの際、技術的動作が出来上がっておらず、防御意識も弱いため、指示通りの訓練を行うことは彼ら「初心者」にとっては難しいことなのだ。
次に、事故発生時における、指導教員の応急能力や必要とされる医療措置についての知識不足も悲劇を生み出す一要因となっている。柔道、剣道はともに日本の二大武道であるが、柔道は剣道と異なり、防具を身につけたり竹刀を振り回したりしない。そのため、柔道の危険性に対する意識が希薄になっており、その指導に当たる上での医療技能訓練が立ち遅れている。静岡県の中学校では、12歳の少年が柔道部での練習中に負傷したが、指導教員がその負傷程度を見誤り、速やかに医療措置を受けられなかったために死亡させてしまったというケースもあった。