松村はかつて、祖母と両親と共に暮らしていた。昨年3月の福島第一原発事故が発生してから、彼ら4人は福島県いわき市の親戚の家に避難した。しかし親戚は、家に子供がいるという理由で彼らが住むのを断った。「近所に避難所があるから」と、この親戚は冷たく言った。松村一家が避難所に行ったとき、そこはすでに満員だった。しかたなく、その日のうちに富岡町に戻ってきたのだ。「百歳の祖母は避難所と病院を転々とし、疲労で死んでしまった」と松村は言う。
数日後、松村の姉が静岡県からやって来て、両親を連れてこの場を離れた。しかし松村は留まり、捨てられた動物たちの面倒を見ることにした。結局、富岡町に住むのは松村ただ一人になった。彼は静岡に行って両親に会いたいと思うが、きっと戻るときの路程はとても長く、孤独に違いない。