ドイツと日本はいずれも第二次世界大戦の侵略戦争の張本人であるが、戦後の独日の指導者による侵略の罪に対する態度は180度異なっている。筆者は東・西ドイツで25年に渡り学習・勤務し、戦後ドイツがいかに第二次世界大戦の歴史の「償い」をし、過去に「勝利」したかを見聞きしており、日本に「ドイツの鏡」を提供できればと思う。
(一)ドイツの歴代指導者は党派を問わず、ヒトラー率いるドイツの侵略戦争を明確に認め、侵略した他国の国民に謝罪を表明している。
(二)ナチスの頭目を法律によって取り締まり、第三帝国の大屠殺という犯罪行為を否定することを禁じ、新たなナチズムの台頭を防いでいる。ドイツの統一前、西ドイツにせよ東ドイツにせよ非ナチズムの粛清を行い、ナチス勢力が公職につくことを禁じた。統計データによると、1946年から1965年の間、西ドイツで6115人、東ドイツで1万2807人がナチスの罪により判決を下された。ナチスを同情し、ユダヤ人を誹謗中傷し悪意に傷つける者、もしくは民族差別を宣伝しヒトラーの大虐殺を否定する者は、3−5年の懲役刑が課される。
(三)ナチスの暴行と第二次世界大戦の侵略の真相を正視し、正確な歴史観を形成するよう、青年を教育している。ドイツは学校の歴史の授業を、若者が正確な歴史観を形成するための主要手段としている。例えばベルリンの教育大綱によると、小中学校9年間の歴史の授業用に編纂された「ナショナリズム国と世界大戦」は、ナチスの歴史の分析を重点としている。高校生向けに編纂された現代史は、学生にドイツがいかにナチスの独裁に走ったかを理解させ、ナチスがいかに欧州のユダヤ人を虐殺する道を歩んだか、20世紀のドイツ社会になぜこのような野蛮な現象が生じたかを検討させる内容となっている。