逆流を遡る鮭のように
中国で夢を実現する道は決して平坦ではない。特に2012年秋以来、中日関係の悪化は矢野さんにとってこれまでにない打撃となった。「去年9月ごろ、すでに決まっていたドラマの出演がキャンセルになったりとか、出席予定だった日本での日中イベントも無期限延期になったりした」と矢野さんは残念そうに語った。
仕事が激減し、先行きの見えない不安から息苦しさを覚えたり、不眠になったりしたという。昨年から番組「天天向上」の司会陣からも離れたままだ。毎日多くの中国人ファンから「微博」を通じて励ましのメッセージが届く。「早くテレビで浩二が見たい、ずっと待っている!」、「浩二、頑張って!」……
「政治的にこじれていても、中国のファンは日本人の僕を受け入れてくれている。そう感じて、中国で生かされていると実感できる。それこそが僕の原動力であり、後ろ盾なんだとありがたく思っている」と話す矢野さんの顔にようやくいつもの笑みがこぼれた。
いつ「天天向上」に復帰するのかについて、矢野さんは「僕たちは依然として『天天兄弟』だ。最近、僕はちょっとやんちゃになって、エスケープして俳優としての夢を求めているんじゃないかな。いつでも兄弟たちに呼ばれるのを待っている。呼ばれたら迷わず番組に戻るだろう」と語った。
現在の仕事の状況について、矢野さんは「役者の部分では、以前と同じ状況に戻っている。8月に連続ドラマの撮影が終わったばかりだし、9月には新しい映画の撮影が始まる。また、文化交流の部分で、日中の友好イベントが以前のように復帰してくれればいいなと思っている」と言う。
2013年8月、矢野さんは「金の池」芸能事務所との契約10周年を迎え、さらに5年間契約を延長することになった。調印式の記者会見で矢野さんは、「間もなく、楊陽監督は僕のために大型スパイドラマを制作する予定で、僕はそのドラマでヒーローを演じる」と発表し、「今後、さまざまなタイプの役に挑戦したい」と語った。
中国での12年間、多くの困難を経験したが、矢野さんは俳優としての夢を追求し続けている。「人間は鮭のように時として命をかけて自ら逆流を遡る精神が必要だ」と矢野さんは言う。
楊陽監督と矢野浩二さん