表紙
中国の人気女性作家、王海鴒(おう・かいれい)のベストセラー小説で、テレビドラマ化されて人気を博した『新結婚時代』の邦訳が、昨年日本僑報社から刊行され、amazonなどネット書店でも売れ行き好調のほか、新年1月5日付のの読売新聞書評面に紹介されて、一層注目されている。
読売新聞の書評は次のように書いている。「中国・北京を舞台に、恋愛結婚した一組のインテリ夫婦と親族らとの人間関係や、様々な結婚・恋愛の形を描く小説。本国では30万部を超えるベストセラーになっており、テレビドラマ化もされた。都市部と農村の格差など、現代中国の暮らしの実情が読み取れる」。
王海鴒には本作『新結婚時代』のほか、『牽手』『中国式離婚』など多数の話題作があり、不倫・離婚をはじめ、結婚にまつわるテーマを巧みに描く作家として中国で高い人気を誇る。本書のなかで、著者が自らの義母の言葉を借りて記したというセリフに「二人が結ばれるということは、二つの家族が結ばれるということ」がある。王海鴒の作品には、中国社会ならではの濃密な人間関係の絆やしがらみが随所に描かれている。この『新結婚時代』でも、主人公となる若い夫婦のそれぞれの実家と親戚、友人、職場の上司・同僚など、多数の登場人物のかけひきや心理描写が織り込まれる。それでいて、読者を飽きさせない軽快なストーリー展開を得意とする王海鴒の手腕が、存分に発揮されているのが魅力だ。
物語の舞台は、北京。北京で生まれ育った文芸編集者の妻と、農村で生まれ育ち、北京の大学を出たエリートエンジニアの夫。それぞれの実家の親兄弟との確執。妻の親友と実業家の不倫の恋愛。さらに、妻の母親の突然の死から、老齢の父親と若い家政婦との再婚話まで持ち上がる。一つの家族の周辺に様々な結婚・恋愛のタイプが提示され、読者にも「結婚とは何か、恋愛の形とは」を考えさせずにはいない。