昨年9月、米司法省長官は自ら記者会見に臨み、米国に拠点を置く日本の自動車部品メーカーが価格を調整し、市場の公平な競争を妨げ、米国の独占禁止法に違反していると発表した。2013年12月末までに、同省は21社の日系企業に対して総額18億ドル(約1880億円)の罰金を言い渡しており、20人の日系企業責任者が禁錮1~2年の実刑判決を受けることとなった。
日本の自動車業界の「秘密」、ヤクザ式結束文化
日本の部品メーカー最大の競争力の一つが「ケイレツ」と呼ばれるビジネスモデルだ。その手法については米全土を席巻するトヨタ自動車の例からも垣間見ることができる。トヨタは関連部品メーカーの多くを米国現地に置き、主な部品の生産、供給をすべて依頼している。そのため、米国本土に利益が漏れることはなく、日本人はこの生産体制を「ケイレツ」と呼んでいる。トヨタと部品メーカーとの間の価格のやり取り、あるいはモノのやり取りは市場と隔離されているため、両者の関係は「閉鎖的な需給関係」だといえる。トヨタは「ケイレツ」のメーカーにだけ部品を依頼し、「ケイレツ」メーカーは優先的にトヨタの要求を満たさなければならず、価格も市場と比べ遥かに安い。一見すると部品メーカーが不利な立場にあるようにも思えるが、実際には部品メーカーにも大きなメリットがある。
そのメリットとは、トヨタは世界規模で自動車販売を展開する大企業であり、トヨタ部品の生産、供給を独占できれば、たとえ安価であっても「ケイレツ」内のメーカーは損をすることはない。トヨタ自動車の注文がある限り、彼らは生き延びることができるのだ。次に、トヨタは今や誰もが知る名ブランドとなっており、トヨタの「ケイレツ」に入れること自体が大きな市場名誉であり、それが商品の質の保証にもなるのだ。そして、余剰能力を利用すれば他の自動車企業にも部品を提供することが可能で、しかもその際は市場価格、あるいはそれ以上の価格で販売することができ、「ケイレツ」メーカーの利益は保証される。こうした日系企業の「ケイレツ」モデルは、昨年の「ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)」で日系企業の成功の秘訣だとして取り上げられたほどだ。しかし、これに対して筆者は「ケイレツは競争力の本質ではない」と同書で指摘した。