「最も中国人を理解している日本人は誰か?」と聞かれれば、丹羽宇一郎(元駐中国大使)氏の名前を挙げる人が多いだろう。日本の「知中派」の中で、丹羽氏は最も独特な経歴を持つ人物の一人だ。丹羽氏は当時、米日安保運動反対の学生グループのリーダーで、卒業後は日本3位の総合商社である伊藤忠商事に入社し、この年間売上が約12兆円に達する大企業の代表取締役社長・会長に12年弱就任した。丹羽氏は企業の不良債権を大胆に整理し、支持を集めた。地下鉄通勤を続け、コンビニで昼食を購入していたことは、今も美談になっている。50年弱の商社マンの生活を終えると、丹羽氏は民間人としては日本初の駐中国大使に選ばれた。しかし運命は皮肉なもので、大使としての生涯は「釣魚島(日本名・尖閣諸島)に始まり、釣魚島に終わる」となった。複雑な国内外の政治的駆け引きにおいて、悲壮かつやるせない日々を送った。フィナンシャル・タイムズ中国語版が伝えた。
この外交の第一線で、中日関係のわずか数年の急激な悪化を経験した75歳の男性は、記者に中日の食い違いについて質問された際に、「中日の間でさまざまな食い違いが生じており、そのうち一部の問題は一朝一夕にして解決できるものではなく、10年、50年、100年の長期的な努力が必要だ。中日両国の対立によって最終的に被害を受けるのは一般人だ。一般人に釣魚島はどうなっているんだと聞いても、ほとんどの人はよく分からない、興味が無いと答えるだろう。重視の姿勢を示し、何かあるとすぐにこの問題を取り上げるのは、民意を悪用する政治家だけだ」と指摘した。
日本の経営者とメディアは「チャイナ・プラス・ワン」により、チャイナリスクを分散化し、東南アジアに移転するよう主張している。丹羽氏はこれに対して、「チャイナ・プラス・ワンという説はそもそも不可解だ。全体的に見て、日本企業の現状はチャイナ・プラス・ゼロだからだ。現時点では、完全に中国の代わりになれる国は見つからない。経済運営にはそれそのものの合理性がある。中国より良い選択肢があるならば、それを求めて行動すれば良い。中国に投資の魅力があると判断するならば、撤退はあり得ない」と反論した。
中日が激しく対立する中、中国国内でも多くのコメンテーターとエコノミストが、日本の中国に対する依存度の方が高く、中国は日本に依存する必要はなくなったと指摘している。丹羽氏はこの説について、「経済はエコノミストの主張や思想ではなく、それそのものの合理性によって運営される。学者の主張や思想によって運営される経済は、悲惨な結末を迎えることが多い。経済そのものの合理性と理論に基づき運営すれば良いのだ。日本が嫌いで、本当に日本に依存する必要がないと判断するならば、合理性に基づき自分で選択をすれば良い。経済の最前線で働いたことのある人ならば、自身の利益、経済の合理性に合致する答案を出すだろう。彼らはコメンテーターや学者よりも、自分の置かれている現状を理解している」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2014年7月20日