安倍晋三首相の賭けは見事に成功した。野党は不意を突かれ、連立与党が景気後退の最中であらゆる予想を覆し、衆議院で3分の2の「圧倒的多数」を維持した。そのうえ首相は、女性5人が任命された内閣改造で自分が選ばれなかったことに腹を立てている自党内の政治家からの反乱の芽を抜いた。首相は誰がボスかということを知らしめた。英フィナンシャル・タイムズが伝えた。
安倍首相は来年の自民党総裁選挙を楽々乗り切るだろう。2018年末まで首相続投を妨げるものは何もなく、安倍首相の首相在任期間は過去半世紀で最長になる。安倍首相は大いなる勝者に見える。
だが、日本の多くのことがそうであるように、少し深く掘り下げてみると、すべてが見かけ通りなわけではないことが分かる。
まず、安倍首相の自民党はわずか4議席とはいえ、議席を減らした。52%という投票率は戦後最低水準だ。家から出なかった人の多くは、安倍首相に反対する票を投じていただろう。投票する価値のある候補者が誰かいたとすればだが。野党・民主党は混迷を極めており、複数の選挙区で候補者を擁立できなかった。民主党は不足を抱えているにもかかわらず、11議席増やすことができた。
大勝を収めたのは、自民党の連立相手である平和主義の公明党と、議席を2倍以上伸ばして21議席とした共産党だった。共産党はこれで、単独で法案を国会に提出できるようになる。その大半は恐らく保守派の安倍首相の好みに合わないだろう。安倍首相にとって最も重要な安全保障政策の点では、公明党の議席増加も気がかりだ。公明党は日本の平和憲法の改正を支持していない。
安倍首相は今、ほぼ確実にその野望を断念しなければならない。公明党が連立政権内でより大きな影響力を持つだけではなく、安全保障に関してより強硬な立場を支持する小さな右派政党が壊滅した。長年政治を観察してきたマイケル・チュチェック氏は自身のブログで、首相の右派の政策課題はこれでストップし、修正主義の政策課題にリップサービスをすることしかできなくなると主張した。説得力のあるこの投稿記事には、「安倍首相はいかにして日曜日に負けたか」という挑発的なタイトルがついている。