英国のフィリップ・ハモンド外相は1月30日、シンガポールの南洋理工大学で演説した際に、「英国はアジア太平洋の軍事力の配備を強化し、地域内の政治・軍事競争による安全情勢の悪化を防止する」と述べた。
ハモンド外相は、「多くのアジア諸国とアジア以外の各国は、東アジアの政治的な緊張情勢とナショナリズムのムードを緊張しながら見守っている」と語った。重要なことは、発言の中で中国の南中国海・東中国海の領土問題について触れ、「英国は明確な立場を表明していないが、国が力によって係争を解決しアジアの秩序を決めることに反対する」と述べたことだ。ハモンド外相は、英国が1971年にオーストラリア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポールと五ヵ国防衛取極め(FPDA)を締結したことについて触れた。この取極めの精神に基づき、英国の国益が脅かされた場合、英国はアジア太平洋に軍事力を配備するというのだ。
英国もアジアに触手を伸ばしており、米日などと同じ立場を表明している。アジア太平洋諸国である米日両国が、アジアで特定の立場を持ち、中国との間に地政学を巡る食い違いがあっても、理解可能な客観的な理由が存在する。遠い別の大陸にある大西洋の島国が、アジア太平洋までやって来て中国に矛先を向けるならば、地政学的にも大国の外交にとっても理屈に合わない。
それらしく聞こえるのは、1971年に英国とアジア太平洋の4カ国が締結したFPDAだ。しかし歴史の常識が少しでもある人なら、これがどのような性質のものであるかを理解しているはずだ。聞こえ良く言えば、これは同じイギリス連邦諸国であり、聞こえ悪く言えば、英国が時代遅れの植民地思想を持っているということになる。