ソニーの平井一夫社長はこのほど、競争が激化するテレビ市場から撤退する可能性を示唆した。東芝、パナソニック、シャープなどの日本の大手テレビメーカーが、海外工場の売却・閉鎖を相次いで発表しており、3600万台弱の市場が中韓などのテレビメーカーに残されようとしている。中韓のメーカーは短期間内にメリットを手にするが、それぞれ悩みを抱えている。中国国内のテレビの競争も、真の王者が存在しない空白の時期に突入している。
ソニーがテレビ事業から撤退か?
平井社長は先ほど、テレビ・スマホ事業に関する質問を受けた際に、撤退も視野に入れ検討すると回答した。ソニーがテレビ・スマホ事業を売却するか、これらの事業の提携先を模索すると噂されてきたが、平井社長の上述した発言はこれに対する最も明確な説明となった。
ソニーの動きは、日本家電メーカーのテレビの敗退が確実になったことを意味する。日本メーカーの没落は、中国企業にとって紛れも無く新たなチャンスだ。中国の家電専門調査会社のAVCによると、東芝の2014年の世界テレビ販売台数は約720万台、シャープは約800万台、パナソニックは850万台、ソニーは1200万台に達した。これらの大手の撤退により、世界テレビ市場に3600万台弱の容量が残されることになる。
危機の中、曙光を迎えた中国企業
この巨大な市場の空間が浮き彫りになったが、中韓のテレビメーカーのチャンスはそれほど明瞭ではない。LGの純利益は2四半期連続で減少しており、そのうち特に力を注いでいた有機ELテレビが最大の敗因となった。中国企業は市場の飽和を迎え、苦しい経営を強いられている。
中国には巨大なテレビの市場が存在するが、20数年間の発展を経て、すでに市場シェアが十分に高まっている。今後さらに国内市場で大幅な売上増を狙っても、実現はほぼ不可能だ。それならば中国のテレビブランドは今後、日本ブランドと同じように、国際市場に競争の場を移さざるを得なくなる。
他にも、テレビメーカーは生産コストの高騰に苦しめられている。資料によると、北京市の1994年の最低賃金基準は240元だったが、2014年には1560元に達し、20年間で5倍以上になった。しかしテレビの価格は低下を続けており、業界の利益が大幅に縮小している。
市場の全面的な回復の遅れ
AVCのデータによると、2015年の春節(旧正月)販促期間(2月2−22日)のテレビ市場の売上高は、前年同期比3.4%減の129億3000万元となった。テレビ業界の厳冬が過ぎ去っていないことが分かる。
近年、動画配信サイトの楽視網やスマホメーカーの小米科技が、テレビ事業に進出している。テレビメーカーのインターネット化へのモデルチェンジの波が押し寄せている。伝統的なテレビメーカーも高利益のハイエンド市場に足を踏み入れ、量子ドット発光ダイオード(QLED)テレビ、100インチプロジェクターなど、1万元以上もする高級製品を発売し、利益が日増しに減少するロー・ミドルエンド市場の不足を補おうとしている。
日本メーカーの撤退により、競争が激化するテレビ市場も新たな再編を迎えようとしているが、市場の真の王者が出現していない。昨年のデータを見ると、ハイセンス、スカイワース、TCLが国内テレビ市場をリードしたが、大きな差はつかなかった。楽視網や小米科技も今年のテレビ製品ラインナップの拡大に取り組んでおり、新たなシェア争奪戦を展開しようとしている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年3月1日