林国本
さいきん、メディアでよく「食糧安全」という言葉を目にするようになったが、地球の人口が70億に達したことで、一部の国ではこのことが重視されるようになっている。日本ではかなりの比率を輸入に頼っているようだが、それでも一部政治家、学者は自給率を向上させる必要性に触れている。
かつて、アメリカの学者が「中国の13億の民を誰が養うのか」ということを提起したこともあったが、中国は新中国の建国後一時期食糧、衣類の配給制を実行していたが、私個人の実感としては、別にひもじい思いをしたことはない。それが改革、開放政策の実施いらい、配給制を撤廃し、配給制時代のクーポン類は、博物館入りするか、切手のようなコレクションの対象となってしまった。そして、おいしいお米やパン、ケーキがいつでも手に入るようになり、衣類もそれこそ洋服ダンスがいっぱいになるほどになり、われわれのような古い世代の人間は配給制の時代のことを知っているが、いわゆる「80後」とか「90後」とかいう若者たちは「へえ、そんな時代があったの」と信じようとしないご時世になった。
そして、この8年間毎年増収、増収で、「食糧安全」なんていう言葉も忘れかけていたが、世界に目を向けると、まだ、十分食べることのできない地域もあるので、やはりこの問題はいくら豊かになったとしてもおろそかにできないと思う。