ゾルゲ事件はすでに過去の出来事であり、旧ソ連の解体や極東情勢の変化で、舞台にはすでに大転換が起こっているが、人類がかつて経験したことを深く掘り下げてみることも大いに意義があることと思う。かつて「鬼畜米英」を相手に戦っていた日本も今や「日米同盟」の時代に入っている。その中でゾルゲ事件をどうとらえるかは、歴史研究家にとっても新たな課題であろう。
日本でゾルゲ事件資料の発掘・研究に国際的視野で取り組み、日露歴史研究センターの白井久也代表が今回のシンポジウムの主な世話役となって沖縄での準備にとりかかっているようだが、氏の話によると、ゾルゲの研究は日本が一番活発で、ロシア、ドイツ、アメリカでの研究も盛んらしい。今回のシンポジウムで事件の内容についての新しい研究も出てくる可能性があり、大いに期待されている。
楊国光さんの初稿を読ませてもらったが、沖縄出身の洋画家宮城与徳の生と死について実に詳しく調べているので大いに感心した。現在のロシヤでは「反ファシズム戦争」の功労者として、すべての犠牲者への叙勲が行われている。当時の日本の官憲側としてはそれとまったく違った立場にあったことも当然であろう。
数十年たった今日、もう一度過去を振り返ってみることによって、今日をよりよく知ることになるであろう。そういう意味で今日のシンポジウムは第二次世界大戦の歴史の精査とも言えるのではないだろうか。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年7月7日