今回討議されていることをいくつか取り上げてみると、現在、北京のシリコンバレーといわれている中関村を含む海淀区の一部は、一大ハイテク産業パークに変貌をとげることが考えられている。宇宙産業、航空産業、ハイテク産業の一大集積地となるわけである。また、北京オリンピック開催の前に大気汚染源を転出させた、かつての首都鉄鋼公司の跡地も、一大コンベンションセンター、アミューズメントセンター、ショッピングストリートになるらしい。さらに北京の北西部の門頭溝は、かなり多くの小炭鉱を閉鎖して環境にやさしい郊外区に変身し、かつての炭鉱労働者の再就職の仕事もすすんでいる。北京南西部の房山も、すでに軽便鉄道が開通し、環境にやさしい企業が次々と進出している。さらに北京の南部は金融センター区に変身すると同時に、一部は東部の亦荘工業パークとドッキングすることになっている。北東部の再開発もすすんでいる。また、南西部には北京市のための生鮮野菜供給地をつくることになり、現在、山東省から供給されているものを加えて、北京市民は安くて新鮮な野菜をいつでも手に入れることができるようになる。
民生面でも、病院、幼稚園の増設が考えられている。要するに、近代的大都市としての北京のグランド・デザインが描かれているわけである。
しかし、討議で口角泡を飛ばして発言することはいとも簡単だが、解決しにくいこともないわけではない。例えば、急激なモータリゼーションで交通渋滞が深刻で、いくら東京やシンガポールの例を参考にしながら解決策を打ち出しても、まだ完全に解決されるには至っていない。特に遠くから出勤している人たちにとってはたいへんらしい。また、有識者の話では、クルマの販売台数を制限することは簡単だが、生産台数、販売台数ともに世界一となった中国のこと、クルマの生産と就職は結びついており、販売台数を制限することで、販売店の経営の問題も発生しかねない。いまさらかつての「自転車王国」にもどることも不可能に近い。