林国本
最近、中国の高速鉄道の目玉ともいわれる北京――上海高速鉄道の走行テストが行われた。一応時速400キロのテスト用車両を走らせて、さまざまな面からデータを収集し、6月に予定されている試運転に備えることになった。
北京――上海高速鉄道のほかに、ハルビン――大連、成都――西安などの整備を考えられており、中国の国土をタテ、ヨコに縦断、横断する高速鉄道網の完成も夢ではなくなっている。
これらのタテ、ヨコの交通網が完成したあかつきには、時々、鉄道駅周辺でウロウロしているダフ屋も廃業せざるをえなくなることであろう。特に、中国のような農耕社会から都市化へと変身をとげつつある国では、まだ農耕社会時代の習俗が厳然と残っており、旧暦の正月近くになると、里帰りの旅客や冬休みに帰省する学生たちの流れが重なって、それこそ日本のお盆の連休のような混雑が見られる。欧米に留学して欧米の文化を身につけているように見える人たちでさえ、その頃になると、そわそわし出すのだから、文化というものの浸透力というものは、実に不思議なものである。一部の新聞では、こういう農耕社会の習俗を見直して、都市文化をより多く身につけてはどうかということを述べているものもあるが、これは10年や20年で変えられるものではないだろう。旧正月の街角の爆竹の燃えかすの山を見るたびに、この習俗はそうたやすく変えられるものではないことを痛感している。