複雑な気持ちで迎えるモータリゼーションの時代

複雑な気持ちで迎えるモータリゼーションの時代。

タグ: 林国本

発信時間: 2015-03-13 17:42:43 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

林国本

 

先般、中国は自動車販売台数で世界でトップとなった、ということが報じられた。

これはある意味では中国の近代化が急速かつ着実に進んでいることを示す朗報ではあるが、地球温暖化対策、低炭素社会の実現ということがホットな話題となっている昨今の時代環境においては、はたして手放しで喜んでいいのかどうか戸惑いを覚えないわけにはいかない。また、そのうちに枯渇することになるという石油のことなどを念頭に置くと一喜一憂に近い気持ちになるのである。

中国人の購買力の向上も目覚しいものがあり、自動車関係のローンとか、内需拡大の強化などでクルマを買う人がどんどん増えている。この勢いでクルマの販売台数が伸び続けていけば、そのうちに今の倍になることも不可能ではない。

さいきん、テレビなどで著名なキャスターが公共交通システムの利用を奨励し、「自転車王国」であった数十年前の中国を懐かしむ発言をしていたが、環境保全、省エネ、アメニティーな生活という点からいえば、この発言はまったく正しいと思う。

中国は石油資源が豊かな国ではないし、なにしろ、13億の人口を抱える国が急速にモータリゼーションに走れば、環境、資源の面で大きな負荷となろう。さらには、あまり新聞には取り上げられていないが、農業大国といわれる中国は農業の機械化の面でも大きな発展を遂げていることを見逃すことはできない。これも石油を大量に使う分野であることは多言を要しない。

先般、マンモス・タンカーを建造していることが報じられ、その際にいわゆる「海賊対策」についても言及されていた。国内の石油需要を満たすためには、シーレーンの確保まで考えなければならなくなっているわけだ。

私が仕事で日本に長期滞在していた頃に実感したのは、日本は世界第二の経済大国となり、一人あたりのGDPが中国よりはるかに多くても、一般のサラリーマンは公共交通機関を利用して出勤しているということであった。マイカーはほとんどウィークエンドや連休の時の家族旅行に使っているのだった。ところが、中国ではクルマで出勤している人もかなりいて、これも交通渋滞の原因の一つになっているし、ガソリンなどの使用量の急増となって現れている。

私も理論的には公共交通システムの多用に同感であるが、正直いってモータリゼーションは私個人の夢であったこともたしかだ。私も一時期マイカー族になろうと考えていたが、自分の携わっている仕事が絶えず頭を使い、神経を使うことだったし、また、クルマのメンテナンス、駐車スペースの確保など面倒なことが多いので、結局、タクシーの利用で間に合わせることにしたが、私は中国人、特に中国の若者たちのカーライフへの夢は心から理解しているつもりである。私事で恐縮であるが、現にヨーロッパ系の企業に勤めている私の子供は一家でクルマ2台持っているし、第一ゴルフなんかに行く場合、まさか地下鉄やバスなんかではいけないのでクルマのあるライフスタイルも大いに結構だと思っている。

しかし、気候の温暖化などで、北極の氷がなくなって白熊が絶滅するかもしれないとか、南太平洋の島国が海面以下に沈んでしまうという記事を目にするたびに、私はこのかけがえのない地球に暮らす人類の一人として、環境とか、省エネとかいうことに関心をもたないわけにはいかないのである。

今年の上海万博では北欧の国が「自転車王国」としての存在感をアピールすることも伝えられている。かつての「自転車王国」の住人のひとりとして大いに興味をもっている。

中国の近代化、工業化には自動車産業という大きな柱は不可欠である。すぐれた国産のクルマをどんどん作れなければ近代化した大国とはいえない。自動車産業の発展は、あらゆる意味でないがしろにできない。それと環境、省エネ、アメニティとをどう結び付けていけばよいのか。これは新しいステージで生じた新たな課題といってもよい。一老ジャーナリストとして、個人的利害を離れて言わせてもらうならば、北京、上海、天津、重慶などの大都市や観光資源に恵まれた地域は公共交通システムを主とすべきだと考えている。この面でのコンセンサスの形成に努めるべきだと思っている。

 

「チャイナネット」 2010年1月21日

TwitterFacebookを加えれば、チャイナネットと交流することができます。
iphoneでもチャイナネット!

日本人フルタイムスタッフ募集    中国人編集者募集
「中国網日本語版(チャイナネット)」の記事の無断転用を禁じます。問い合わせはzy@china.org.cnまで
 

コメント

コメント数:0最新コメント

コメントはまだありません。