林国本
先般、天津市に行く機会があったが、その時たまたま、元天津市人代主任の王述祖氏と朝食をともにする機会に恵まれた。王述祖氏はもとは天津市で対外貿易主管の仕事をしていた人で、その後、天津市の開発区の仕事をも主管していたといわれている。朝食の席で、王さんは自分は日本の総合商社や中国浙江省義烏市の日用雑貨市場の発展などについて本を書いている、と話していた。
筆者はこの話に大いに興味を感じた。一直轄市のトップ層にいた人が多忙の中、こういうことにも関心を持っているとは初耳だが、日本の総合商社は世界的にも珍しい存在で、ユニークな組織形態である、と見られている。日本人には、失礼な言い方になるかもしれないが、日本人との長年のお付き合いの中で、その特異性、ムラ社会的行動、「島国的思考」といったものを感じる場合がかなりあったので、総合商社という組織を作り上げたことにとくに興味を覚え、いろいろ本を集めて勉強し、また、日本の商社の人たちとのお付き合いの中でいろいろ教えてもらったりしてきたが、なにぶん多忙なジャーナリズムの世界に身を置く身で、ポイントをつかむには至っていないが、中国にとっても参考になる、とうすうす感じている。こういう面で中国のシンクタンクや、実務にたずさわっている人たちのご高説を拝聴してみたい、とも思っている。
筆者は浙江省の寧波をルーツとする人間であり、たまたまジャーナリズムという、ビジネスとは直接かかわりのない分野で過ごしてきたが、よく友人に「君のパフォーマンスを見ていると、典型的な浙江商人の血が流れていることを感じるよ」といわれている。これはほめ言葉なのかどうかは定かではないが、そういうこともあって、香港などのビジネス界の浙江省系の人たちの資料を読み、この十年は温州商人についての資料によく目を通している。
中国は約五千万人の華僑、華人がいるとも言われている。その中の一部の人たちの商才は世人の認めるところである。この人たちの商才と日本の商社マンのそれとの共通点は、相違点は、ということも考えてみてはどうかと思う。
中国は内需の開拓に力を入れているが、諸外国、地域との貿易もおろそかにできない。特に今回の国際経済危機で、いわゆる低付加価値の加工貿易はダメージを被っている。次なる30年に、さらなるグレードアップ、飛躍を実現するには、みずからの長所を生かし、短所をカバーしていく必要があろう。そういう意味でも、「他山の石」として他国、他民族のよいものをじっくり検討、研究していくことも必要と思える。世界中で活躍する「温州商人」と日本の「商社マン」は、非常によい研究テーマのひとつだと思う。
「チャイナネット」 2009年7月9日