1947年の憲法施行から1960年の新日米安保条約締結までの間には、朝鮮戦争があり、核兵器を持った米ソの対立があった。こうした国際環境の下、裕仁天皇は、日本の独立後も米軍がとどまることを自ら求めた。天皇は、日本の安全はそうしてこそ保障されると考えた。当時の最大の仮想敵は共産主義だった。
新日米安保条約と日米地位協定はいずれも、安倍晋三首相の母方の祖父に当たる岸信介が首相として締結したものである。安倍首相が憲法9条を変更して交戦権を取り戻そうとしているのは、祖父の仇を討とうとしているようにも、その念願を叶えようとしているようにも見える。安倍首相は「戦後体制の脱却」をスローガンとしながら、「日米のパートナーシップ」の強化を主張している。安倍首相の目標は、日米安保条約の枠組みの下で、米国と対等に渡り合うパートナーとなることにほかならない。だが安倍首相は、米軍が日本に駐留している目的の一つが日本の軍国主義復活を防ぐことにあることをわかっていない。米国にとって日米安保条約における最大の仮想敵は日本である。
池澤はコラムで、屈辱的な条約を無効にして日本の主権を回復するには、憲法の改正が唯一の道であると指摘する。日本人が自ら起草する新たな憲法に「いかなる国の軍隊も国内の駐留を許されない」と書き込めば、日本を事実上70年にわたって占領してきた米軍を一掃することができる。池澤の立場の変化は、同じく中道左派の日本の知識人の多くが、原発と米軍基地を止められない現状を前にして、現行の憲法にしがみついていたのでは日本国民の安全を守ることはできないことにようやく気付き始めたことを示している。右傾化には断固として反対の立場を取る日本の知識人にとって、唯一の出口は「左折」である。だが日本は果たしてこの道をたどることができるのか。現状においてその可能性はほとんどゼロに近いと言わざるを得ない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年4月28日