第二に、日本は、国際経済の新秩序の構築を米国とともにリードすることを望んでいる。安倍首相の訪米のもう一つの目玉は、TPP交渉について米国と話し合いを継続することにあった。日本のTPP交渉への参加は比較的遅く、交渉が始まってから途中で加わった国の一つである。だが日本はTPP問題で、米国を後追いし補佐する役割を超え、さらに影響力のある役割を負おうとしている。安倍首相は4月29日の米議会演説で、日本と米国はTPP問題をリードし、「いかなる国の恣意的な思惑にも左右されない、フェアで、ダイナミックで、持続可能な市場を作り上げなければならない」と語った。この発言には、日本がTPP構築のプロセスで自らを米国と対等のリーダーと位置付けていることを意味している。日本は、多極化する世界の中で経済的な一極を担っており、TPP交渉においても遅れを取るまいとしている。とりわけ地域経済の発展が始まったばかりで、貿易ルールが再調整されている段階で、日本は、新たな国際貿易ルールの制定で主導的な発言権を握ることを望んでいる。
日本のそうした態度に対して、米国は正面からは反応していない。だが日米が共同で発表した「日米共同ビジョン声明」には、「日米両国は、TPPの二大経済大国として、これまでに交渉された貿易協定の中で最も高い水準の協定をまとめるために取り組んでいる」との記述がある。米国は少なくとも、日本と共同でTPP交渉をリードすることに反発はしていない。TPP交渉においては、米国は「シングルコア」か「デュアルコア」かにはこだわっておらず、日本と協力してTPP交渉の早期成功を促し、世界と地域の経済秩序の変化の中で主導的な地位を引き続き保つことを重視している。