4月5日、清明節(日本の盆に当たる)のこの日、北京の歴代帝王廟の中にある景德崇聖殿で、弓を射ることを通して礼を体現する中国古来の儀礼、射礼(じゃらい)が催された。その中にこれまで中国伝統衣装である漢服をまとったひとりの日本女性がいた。
頭にかんざしを挿したその女性は加藤亜彩さん(24)。現在、中国人民大学哲学院の中国哲学科に通う学生で、射礼の司会者を務めていた。時代ごとのさまざまな漢服の名称や特徴を中国語で紹介するのが仕事だ。
彼女は北京に来る前、愛知大学の現代中国学部で1年の時から中国語の勉強していた。その後交換留学生として中国人民大学哲学院に1年留学、現在は修士課程を学んでいる。加藤さんが中国に興味を持つようになったのは、子供の頃に「十二国記」と「彩雲国物語」といった小説を読んだのがきっかけ。中国に神秘的でおもしろい国というイメージを持ったという。
『衣装の国』といわれる中国を理解するには、まずは自分が着ることが大切。そう思った彼女は今年4月に、500元で自分用の漢服を仕立てた。何かの催し物が必ず着ていくお気に入りだ。
彼女は漢服のほかにも、茶道にも心得がある。射礼の祭典が行なわれている間にも、周りの人にお手前を披露。自分では「ぎこちない手つきで恥ずかしい」と言っているものの、評判はなかなかのものだ。
さらに加藤さんは音楽にも興味をもつ。式典で演奏された中国伝統の儀式音楽「雅楽」がとても美しく、中でも「関山月」や「春江花月夜」などの曲は忘れられないという。一人でたくさんの楽器を演奏する楽員の技量にも感服していた。
「私も中国の笛を勉強したことがありますが、音が出るまで2ヶ月かかりました。そのときに演奏したには民謡の『茉莉花』でした」と教えてくれた。
中国に勉強に来てまだ日の浅い加藤さんだが、大学が休みのときは天津や上海、雲南省、西安市などを訪ねた。各地の印象は「日本の生活より自由で楽しい」というものだそうだ。「知らないうちに中国のすべてが好きになりました。北京の生活もとても楽しいです」と笑顔で話す加藤さんだった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年5月23日