先進7カ国首脳会議(G7サミット)が、6月7−8日にドイツで開催された。安倍晋三首相が、会議に出席した。安倍首相は中国に関する話題を自ら取り上げ、南中国海などの問題を巡り「中国脅威論」などを極力喧伝した。安倍首相の発言は「行き過ぎ」ではあるが、筆者は現在の中日関係の構造に実質的な影響が及ぶことはないと考えている。中国に対する強硬姿勢をアピールした裏側には、国内の政治的圧力があった。
日本国内ではすでに、8月の「敗戦70周年記念日」に関する議論が展開されている。多くの民間団体は、この記念日の前後に、日本の平和憲法の根幹をなす9条の重要性、護憲の必要性を人々に強く訴えると表明した。安倍首相本人も、この記念日に重要な談話を発表する。談話は全体的に、従来の平和主義を基調とすることが予想されている。記念日の前後に、日本の政界に満ちる雰囲気は、改憲を急ぐ安倍首相にとって不利になる。
国際的に見ると、今回の反ファシズム戦争勝利70週年の記念活動において、日本は戦争の発動者・敗戦国として、戦争に巻き込まれた国からの批判を免れない。安倍首相が就任以来進めてきた、日本を「正常な国」に戻らせるさまざまな取り組みを考えると、この歴史的な批判が現実と結びついた場合、安倍首相及び日本政府の国際的なイメージに大打撃をもたらすことになる。
そのため、安倍首相がG7サミットで強気に出た理由が理解できる。泥棒が泥棒を捕まえろと叫ぶような芝居により、この起こりうるリスクを回避しようとしたのだ。しかしこの作戦が安倍首相の願い通りになり、予想通りの効果を発揮することはあるだろうか?サミット閉幕後の数日の成り行きを振り返ると、これには大きな疑問符を打たざるを得ない。G7サミットの終了後に発表された「首脳宣言」は、中国を「名指し」で批判という日本の要求に応じなかった。9日付読売新聞は、政府筋の話として、「中国の海洋活動に関する問題を取り上げたのは、安倍首相一人だけだった」と報じた。また日本国内には平和憲法を守ろうとする流れがあるが、これは安倍首相の脅かしによって弱まっていない。ノーベル賞委員会は同じく9日、日本の平和を愛する人々「憲法9条にノーベル平和賞を」の推薦状を受理したとする通知を出した。安倍首相の改憲の道に、また暗い影が落とされた。
安倍首相のG7での発言は、仕方なく行使した政治の手口に過ぎず、中日両国関係に実質的な影響を及ぼすことはない。しかし我々は安倍首相に対して、その改憲の道は失敗に終わることを教えなければならない。「中国脅威論」を喧伝し、これを改憲の口実とすれば、中日両国の得難い相互信頼の基礎を損ね、遅かれ早かれ中日関係に根本的な損失をもたらすことになるだろう。(筆者:孟明銘 復旦大学歴史学部日本研究専攻の博士課程院生)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年6月12日