世界的に有名な経済紙「フィナンシャル・タイムズ」(FT)にこのほど、新たな株主がやってきた。日本経済新聞社(日経新聞)が約13億ドルを投じて、この127年の歴史を持つ新聞を英ピアソン・グループから買収した。
買収案は幅広い関心を呼んでいる。一部の人は、日経新聞のコントロール下に入ることで、FTが日本の企業と政府に対する客観的な報道を保てなくなるのではないかと心配している。長期にわたって、日本政府は、記者クラブなどの制度でメディアに干渉し、日本メディアの批判の声を抑えてきた。こうしたやり方がFTの今後の評判に影響するのではないかという心配だ。
日経新聞がFT買収を宣言した後、多くのメディアは4年前の事件を振り返り、日経新聞は日本企業のマウスピースにすぎないと批判している。
2011年10月、オリンパスの元CEOのマイケル・ウッドフォードは同社の会計にかかわるスキャンダルをFT紙に暴露した。オリンパス取締役会は20年にわたって1990年代以来の投資損失を隠し続け、これらの損失を買収の名で処理していた。
このスキャンダル各大型メディアは幅広い関心を寄せ、追跡報道を行った。だが日経新聞は当初これを無視し、その後もはっきりとしない報道でこれをうやむやに処理した。
メディアの取材を受けたウッドフォードは、日本メディアは「強い勢力に対して丁重で忠実な態度を持つ傾向がある」と指摘する。もしもFTが当時、日経新聞に保有されていたのなら、オリンパス社のスキャンダルを氏がFTに暴露することもなかったという。
ウッドフォードは、「日経新聞の買収による無意識の影響で、FTが、日経新聞を含む日本企業を批判する記事を掲載しようとしなくなるのではないかと心配している」と語った。
こうした外部の批判に対し、日経新聞の岡田直敏社長は、オリンパス事件の報道では「私たちは出遅れたかもしれないが、遠慮したわけではない。FTは自らの編集の原則で報道し、私たちは私たちの原則で報道する」と回答した。